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イベントレポート
EVENT REPORT

これまで開催したプログラムを
レポート形式でご紹介します。

MMMレクチャー
2019.3.8

アートの中の黄金比をひもとく

日   時:
3月8日(金)18:30~20:00
会   場:
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル3階
講   師:
野老朝雄氏(美術家)、三星安澄氏(グラフィックデザイナー)

現在、東京・上野の国立西洋美術館では「国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」が開催中です(5月19日(日)まで)。建築家としてだけでなく画家・コルビュジエとしての側面にも触れることができる本展では、彼が絵画作品を描く時に“黄金比”をよりどころとしていたことも解説されています。本展にちなみ、お二人の講師をお招きして、黄金比について対談形式でお話しいただきました。

 今回ご登壇いただいたのは、東京 2020オリンピック・パラリンピックエンブレムをデザインしたことでも知られる美術家の野老朝雄さんと、学生時代から野老さんに師事し、現在グラフィックデザイナーとしてご活躍中の三星安澄さん。話題のお二人による貴重な対談とあって、多くの参加者の方が駆けつけてくださいました。
 そもそも今回のテーマである黄金比とは、一本の線を二つに分割した時、長い部分と短い部分の比が全体と長い部分の比と等しくなる比率のことで、近似値が1:1.618というもの。古代ギリシャで発見されて以来、人間にとって最も安定する美しい比率とされています。一見、難しそうなテーマに身構えてしまいそうですが、講座冒頭、三星さんが野老さんとの関係性を冗談を交えながら話してくださったことで、会場の雰囲気が一気に和んでいきました。

 まずは、葛飾北斎の《冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」》やミロのヴィーナスなど、巨匠たちの作品を例に黄金比を説明。その上で「黄金比は物事を決める時の判断基準ではあるけれど、素晴らしいものができるとは限りません。もちろん、iCloudのマークやペプシのロゴなど黄金比を利用している企業は沢山ありますし、名刺も黄金比を利用しているなど絶対的な数字ではありますが、教養のひとつとしてとらえるのが安全だと思います」と野老さんは黄金比の“役割”について丁寧に紐解いていきます。そして、「最近こだわって使うのが“律”(ルール)という言葉なのですが、音楽でいうところのパッヘルベルの『カノン』のようなもの。日本の歌謡曲はカノンと同じコード進行でできているものが多いのですが、律とは循環コードのようなものなんです」と語り、2005年日本国際博覧会「愛・地球博」のトヨタグループ館のために制作されたチョウチョのデザインや、東京都・文京区のシンボルマークなど、野老作品における律の中の黄金比をテーマに次々と制作秘話を明かしてくださいました。

「皆さん、今日、僕が変なTシャツを着ていると思いませんでしたか?」と突然、席を立ち上がった野老さん。「クマちゃんのTシャツなんですけれど、黄金比の円を描いて3か所黒く塗ったら、偶然、可愛いものを見つけてしまったんです」と茶目っ気たっぷりに話すと、会場の皆さんからも笑い声が漏れます。このクマは、kumapon(g)という野老さんの手掛けた作品で、黄金比によって大きさの異なる複数の円で構成されています。円の色を塗り分けることで、少女漫画のような目になったり、笑ったり、驚いたり……、クマの表情が変化しているように見えてくるから不思議です。大小の円を組み合わせて作られた野老作品の数々は、黄金比で作られた円の無限の可能性を伝えるとともに、見方の楽しさも存分に教えてくれました。

 野老さんと三星さんのテンポのよい掛け合いにぐいぐい引き込まれ、あっという間の1時間半となったレクチャー。黄金比をテーマにデザインの制作過程や制作に込められた思いを知り、多くの刺激を受けたひと時となりました。

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