ドガとその永遠のモチーフ“裸体”との関係を紐解く『ドガと裸体』Degas et le nu
ドガとその永遠のモチーフ“裸体”との関係を紐解く『ドガと裸体』
『ドガと裸体』
Degas et le nu
286ページ
フランス語/刊行2012年
本体記載価格/39.95ユーロ
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貴重な写真と証言をふんだんに収録した一冊

今年3月から7月まで、パリのオルセー美術館で大規模なドガ展が開催されました。ドガの大々的な回顧展がパリで開催されるのは、1988年にグラン・パレ・ナショナル・ギャラリーで開かれたドガ展以来のこと。テーマは「ドガと裸体」とあって、展覧会は大きな話題となりました。今月は、その公式カタログをご紹介します。

ドガは「印象派の画家」に位置づけられるものの、モネをはじめとするほかの印象派と違って、風景をあまり描きませんでした。描いたのは、競馬やオーケストラ、バレエといった都市住民の日常。なかでも、「裸体」はドガが生涯にわたって繰り返し取り組んだ重要なモチーフでした。

今回の展覧会では、その「裸体」をキーワードに、オルセー美術館の所蔵品はもちろん、ボストン美術館やフィラデルフィア美術館、シカゴ美術館、メトロポリタン美術館などから集められた作品が一堂に会しました。全279ページに及ぶヴォリュームのカタログのページを、「古典的肉体」「開発された肉体」「観察された肉体」「変化した肉体」などの章を追いつつ繰っていくと、ドガが油彩や素描、版画、彫刻とありとあらゆる手法を駆使して、裸体表現を発展させていった課程がよくわかります。なかでも今回、数多く展示されたパステル画は、ドガの裸体画の頂点を示すもの。そのパステルならではの柔らかく微妙なマチエールを大型の判型で再現しているのも本書の魅力です。

古典的裸体画から、より親密な裸体画へ──。ドガの裸体画を通じて、西洋近代美術史における裸体画の変遷を俯瞰することもできる一冊です。

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