グルノーブル、「旧司教館博物館」展覧会カタログ『ドアノーのアルプス』Les alpes de Doisneau
『ドアノーアルプス』
『ドアノーのアルプス』
Les alpes de Doisneau
著者/Isabelle LAZIER
24.5×28.7cm/160ページ
フランス語/刊行2012年
発行元/Glénat
本体記載価格/30ユーロ
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世界中が愛した写真家ドアノーが見た大自然

毎年11月、パリでは「パリフォト」と呼ばれる世界最大の写真展が開催されます。この時期のパリは、カフェなどでも写真に関するさまざまなイベントが開かれ、世界各国から著名な写真家や写真ファンがつめかけます。今月はこの「パリフォト」開催にちなんで、20世紀パリを代表する写真家ロベール・ドアノー(1912-1994)のカタログをご紹介します。2012年11月から2013年9月まで、グルノーブルの旧司教館博物館(Musée de l'Ancien Évêché)で開催された、同名の展覧会図録です。

ドアノーの名を知らなくとも、その代表作が「パリ市庁舎前のキス」といえばピンとくる方は多いはず。柔らかな光が差すパリ市庁舎前の雑踏の中で、ひと組のカップルがキスを交わすロマンティックな作品です。ドアノーはこの作品に代表されるように、パリという都市を舞台に、日常の光景を切り取ったファッショナブルな作品を多く残しました。しかし、今回ご紹介するカタログに収められている作品の舞台は、アルプス。パリの都会を見つめ続けたドアノーのもうひとつの魅力に触れることができます。

ドアノーは1930年代後半から60年代後半にかけて、休暇や広告などの仕事でムジェーヴ、チロル、シャモニーなど、アルプスの麓に広がる山岳リゾートに頻繁に足を運びました。本書では、都会で生きる人々とはまた違う、大自然に抱かれた人間の生き生きとした表情をとらえた作品が次々に登場します。中でも印象的な1枚が、チェリストでもあり、俳優、登山家としても活躍したモーリス・バケをシャモニーの大雪原で撮影した数点の作品です。チェロの美しいフォルム、シャモニーの雄大な景色、そしてコミカルなモーリス・バケの姿がまるで1本の映画を見るかのようにフレームに収められています。物言わぬ写真の中に、雄弁な物語を編み込むドアノーの写真芸術の魔術。世界中が愛したドアノーの写真の力を改めて感じ取れる一冊です。

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