「フレームを超えて ジェラール・ロンドーの写真」
 
  毎年11月、パリ市内の美術館やギャラリーでは、写真に関するイベントが開催されます。今年で14回を数えるこの「Mois de la Photo à Paris(パリ写真月間)」にちなんで、今月は異色の写真展のカタログをご紹介しましょう。
 2005年10月から翌1月までパリのグラン・パレ・ナショナル・ギャラリーで開催された「フレームを越えて−ジェラール・ロンドーの写真」展は、展覧会の舞台裏にスポットを当てた写真展として多くの人々の注目を集めました。音楽家とのコラボレーション作品や独特の視点で切り取った詩的な表現を得意とするフランスの写真家、ジェラール・ロンドー。彼はフランス国立美術館連合(RMN)からの依頼を受け、過去10年にわたり、グラン・パレ・ナショナル・ギャラリーを中心にフランスの国立美術館で開催される展覧会の様子をそのフレームにおさめてきました。しかし、彼は展示作品を単に“記録”するのではなく、作品の搬入から設置、現場に行き交う人々の姿を捉えることで、何もない会場から展覧会の場へ変貌するまでの“物語”を紡ぐことに成功したのです。
 
フレームを超えて―ジェラール・ロンドーの写真
Hors cadre, photographies de Gérard Rondeau
29×24cm/188ページ
フランス語/刊行:2005年
価格/11,130円(税込)
本体記載価格/39ユーロ
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   1996年、グラン・パレ・ナショナル・ギャラリーで開催された展覧会のため、日本の興福寺から海を越えてパリにやって来た奈良時代の仏像は、ジェラールのフレームのなかで、保護シートを被ったまま笑みをたたえています。彫刻や絵画作品の素晴らしさを効果的に観衆に伝えるため、作業にあたる人々は台座の設営にも余念がありません。日ごろ目にする機会の少ないこうした展覧会の舞台裏を、記憶として封じ込めた作品135点を収録するこの写真集は、目に見えるものを写すのではなく、現場の息遣いや張り詰めた空気感などをみごとに表現する、ジェラール・ロンドーの世界観を存分に味わえる一冊です。
 
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