「ポスター画家フランシスク・   プルボ 1879-1946年」

子どもたちを愛したポスター画家の 画業と人柄に迫る一冊。

 フランス語で「プルボ(poulbot)」とは、「浮浪児」あるいは「ストリート・チルドレン」を指す言葉です。その由来となったのは、20世紀前半のパリでもっとも人気のあったグラフィック・アーティストのひとり、フランシスク・プルボ(1879-1926年)でした。今月、MMFのライブラリーからご紹介するのは、そんなフランス語の由来となるほどの活躍をしながら、現在では徐々に忘れられつつあるプルボの世界にクローズアップした一冊。現在、パリのフォルネ図書館で開催中のフランシスコ・プルボ展のカタログです。

 フランシスク・プルボが生きた19世紀末から20世紀前半のフランスでは、普仏戦争(1870年)と第一次世界大戦(1914-1918年)というふたつの戦争で、多くの人々が命を失いました。戦争の一番の被害者は子どもだとよくいいますが、それはこの時代も例外ではありません。戦争が終わった1920年代のパリには、両親の庇護を失った多くの子どもたちが残されたのです。そんな子どもたちの姿に胸を痛め、絵筆をとったのがプルボでした。やせっぽちで、つぶらな瞳、少し寂しげな口元をしながらいつもひょうきん……。プルボが描く子どもたちのイメージは、戦後のパリを健気に生きる浮浪児たちの悲しい状況を何よりも雄弁に訴えかけるものでした。

 
「ポスター画家フランシスク・プルボ 1879-1946年」
Poulbot Affichiste-Francisque Poulbot 1879-1946
25.2×19.2cm/167ページ
フランス語/刊行2007年
本体記載価格/28ユーロ
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さらに、プルボは浮浪児のための無料診療所を設立するなど、彼らの境遇のために実際に立ち上がった活動家でもありました
 本書は、ポスター画家としてのプルボの画業はもちろん、プルボの人間性にも迫る展覧会の内容を、専門家による書き下ろしのテキストとともに収録しています。オールカラーで紹介される130点のポスターは、ミシュランやパイレックスといった企業や、デパート、さらには国家の注文で作成されたものまで多種多様。さらに、古写真とともにプルボの人生を紐解いていきます。人々に愛されたポスター画家の画業、そして人生を通じて第二次世界大戦前のフランスをさまざまな視点から見直すことのできる一冊です。
 
 
 
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