「HOKUSAI」
 

世界を魅了し続ける北斎の魅力が満載
ギメ東洋美術館「HOKUSAI」展のカタログ

 2008年4月のwebサイトから、MMFでは日仏交流150周年記念企画に関する記事を特集してきました。先月は、このMMFのライブラリーでも日本とフランスの交流に尽力したフランス人小説家ピエール・ロティに関する一冊をご紹介しました。そして今月は、フランスにジャポニスム旋風を巻き起こした立役者のひとり、浮世絵師の葛飾北斎を取り上げた展覧会カタログをご紹介しましょう。
 5月21日から8月4日までパリのギメ東洋美術館で開催中の「北斎展」は、作品の前に人垣ができるほどの盛況ぶりが伝わってきています。19世紀、パリを席捲したその人気が、現代も衰えていない様子に驚かされます。フランスでのジャポニスム人気の起爆剤となったのは、1867年に開催された万国博覧会でしたが、こうした日本趣味ブームが到来する10年ほど前に、じつは北斎の名前はすでにフランスでは知られていたようです。というのは、ヨーロッパに輸出された日本の陶磁器の梱包材として使われていたのがなんと≪北斎漫画≫で、その“脇役”が現地で大流行したという逸話があります。
 北斎の版画や絵画を約130点も所蔵するギメ東洋美術館が主催する本展では、名高い≪赤富士≫はもちろん、珍しい≪青富士≫、さらにはフランスの浮世絵研究者の先鞭者でもあり、文豪のエドモン・ゴンクールが発行した北斎に関する雑誌の実物も並べられ、作品の魅力はもちろん、当時の時代背景などにも丁寧かつ大胆に迫っています。

「HOKUSAI」
23×29cm/245ページ
フランス語/刊行2008年
本体記載価格/39ユーロ

MMMでは海外書籍のお取り寄せも承っております。
   本書はそんな展覧会の全容を網羅した一冊。ページをめくるたび驚かされるのが、その色彩の美しさです。日本美術に使われる藍色や朱色は、印刷技術で表現するのがひじょうに難しいといわれますが、本書ではそれをみごとに表現しています。LIFE誌が行った「この1000年で最も重要な功績を残した世界の100人」の調査(1999年)で、日本人から唯一選ばれた葛飾北斎。時代を越えて、フランスだけでなく世界中の人々を虜にし続ける北斎の魅力が詰まった一冊に仕上がっています。