「ある美術編集者のコレクション:アリス・テリアード寄贈」
 
 
 
20世紀の伝説となった美術編集者のために
マティスが装飾を手がけた食堂が新コレクションに
人生の喜びを輝く色彩で描いた画家アンリ・マティス(1869-1954)。その知られざる名作のひとつが、2007年、フランス北部の小さな町ル・カトー・カンブレジにあるマティス美術館のコレクションに加わりました。マティスの友人の美術編集者テリアード(1897-1983)が所有していた別荘の食堂です。

「ある美術編集者のコレクション:
アリス・テリアード寄贈」
La donation Alice Tériade
La collection d'un éditeur d'art
24×27cm/135ページ
フランス語/刊行2007年
本体記載価格/25ユーロ
 テリアードは、20世紀のパリで活躍した美術評論家・編集者で、1937年に創刊した豪華美術雑誌『ヴェルヴ』は、世界でもっとも美しい雑誌として話題を呼びました。マティスの新境地となった切り絵集『ジャズ』(1947年)を出版したのもテリアードです。彼は、1946年、南仏サン=ジャン=カップ=フェラの地に別荘を購入。その5年後、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の装飾を終えたマティスは、別荘の食堂の改装を申し出ました。完成したのは、白を基調としたシンプルな空間。壁にはプラタナスを描いた白いタイルの装飾が掛けられ、窓は<中国の魚>を主題にしたステンドグラス、テーブルには真っ白な果物入れが置かれました。テリアードが愛妻アリス、そして芸術家たちと憩いの時を過ごしたこの空間が、この度、マティス美術館の展示室にそっくり移築されることとなったのです。

 そもそもテリアードが所蔵していた美術コレクションの一部は、その死後、すでにマティス美術館に寄贈されていました。この度の寄贈は、2007年2月にこの世を去ったアリスの遺志によるものでした。食堂の他にも、レジェやピカソ、ルオー、シャガールらの油彩やミロやジャコメッティの彫刻などが含まれたこの遺贈品を、美しい写真で紹介するのが本書です。作品の見どころと共に、今や伝説となった名編集者テリアードとマティスをはじめとする芸術家との関係を紐解くテキストが収録されています。