『モネ:印象主義者の眼』

「モネ:印象主義者の眼」
Monet L'Oeil impressionniste The Impressionist's Eye
22×28.5cm/176ページ
フランス語・英語/刊行2008年
白内障を患い、色彩を失った印象派の画家
その世界を科学的に解明した特別展のカタログ
 1912年、71歳のクロード・モネは白内障と診断されました。以降、モネの視力は衰え続け、10年後には、左目の視力は0.1、右目はわずかに光と動きを感知するだけにまでなってしまいます。光と色の微妙なうつろいを描くことに執着した画家にとって、視力を失うことは恐怖そのものでした。そして、周囲の勧めにも関わらず、頑なに手術を拒んできたモネも1923年、ついに手術を受けました。
 2008年10月から2009年2月まで、マルモッタン美術館で開催されて話題を集めた特別展「モネ:印象主義者の眼」は、白内障を患った画家モネの目に映った光景と、カンヴァスに描かれた世界との関係を科学的に解明したこれまでにない展覧会でした。
 白内障は画家の視力を低下させるのみならず、色彩をも奪いました。青を感知する能力が低下するため、モネの瞳に映る世界は黄色から赤みがかった茶色のようになってしまったのです。晩年になり、より抽象的で激しい色彩の作品世界に到達した画家モネ。それは、色彩の欠乏という印象派の画家にとっては、致命傷ともなりかねないハンディキャップを克服したことの結果でもあったのです。特別展では、白内障以前と以後、そして手術後のモネの作品の色彩の変化を分析するのみならず、当時のモネの目に実際に映ったであろう世界をCGで再現して比較。モネが想像力と経験を駆使して弱視を乗り越え、自らの芸術を創造するまでの過程を提示するほか、モネの作品がわれわれの脳に与える影響など、最新の科学技術を駆使した展示で印象派の巨匠の“眼”を徹底解析しています。本書は、その内容を余すところなく伝える一冊です。

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