ポップでお洒落でシニカルなフランスの漫画と
装飾芸術美術館のおもちゃコレクションの
コラボを楽しむ

今月のMMFwebサイトの特集では、「フランス漫画の聖地アングレーム」にスポットを当て、「フランス漫画博物館」と、欧州最大規模の漫画の祭典「アングレーム国際漫画フェスティバル」を紹介しています。

フランス語で「バンド・デシネ（bande dessinée）」、略して「BD（ベデ）」と呼ばれる漫画は、フランスでも今や立派な芸術のひとつとして認められ、ルーヴル美術館をはじめ、さまざまな美術館・博物館で展覧会が開催されるようになりました。今月は、そんな漫画にちなんだ展覧会のひとつ「トイ・コミックス」展のカタログをご紹介いたします。

2007年にパリの装飾芸術美術館で開催されたこの展覧会は、フランスを代表する漫画作家ジャン=クリストフ・ムニュの指揮により実現しました。ムニユは、独立系出版社「L'Association」を主催し、90年代以降のフランス漫画界に新風を吹き込んだアーティストのひとりです。「トイ・コミックス」展は、この「L'Association」に関係のある国際的な漫画作家34名に、装飾芸術美術館の「おもちゃのギャラリー」のコレクションから１点を選んでもらい、そこからインスピレーションを得た漫画を書き下ろしてもらう、という企画でした。

装飾芸術美術館の「おもちゃのギャラリー」は、展覧会の前年、2006年にオープンしたばかり。おもちゃをオブジェとして捉え、年代やエリアなどに関係なくショーケースに飾る斬新な展示スタイルが、人々の話題を呼びました。今回の展覧会では、おもちゃたちは、さらにそのショーケースから飛び出し、気鋭の漫画作家たちの手によって、新しいアートとして2次元の世界で動き出しました。

そのユニークな世界を紹介する「トイ・コミックス」展のカタログは、単なるカタログの枠に収まらない美しい装丁とデザインで、2007年度のフランスの最も美しい本の一冊にも選ばれました。いわゆる日本の「マンガ」とはひと味もふた味も異なる、お洒落でシニカルなフランスらしい漫画の世界を楽しめる一冊です。