『女性の肖像―マリー=アントワネットの時代の画家とモデルたち』


『女性の肖像
――マリー=アントワネットの時代の画家とモデルたち』
Portraits de femmes : Artistes et modèles à l'époque de Marie-Antoinette
オリヴィエ・ブラン著
22.2×26.6cm/348ページ
フランス語/刊行2006年
本体記載価格/49.9ユーロ

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3月1日(火)より三菱一号館美術館で幕を開けた「マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展−華麗なる宮廷を描いた女性画家たち−」は、今年最も注目を集めている展覧会のひとつです。マリー=アントワネットと同じ年の1755年に生まれた美貌の女性画家、ヴィジェ・ルブランを中心に、18世紀のフランスで活躍した女性画家にスポットを当てたとても珍しい内容の展覧会です。

そこで今月は、この展覧会にちなみ『女性の肖像』と題された一冊をご紹介しましょう。日本語訳の本も何点か出版されている著者オリヴィエ・ブランは、女性の視点から18世紀フランス史をひもといている歴史家です。歴史の表舞台に立つ男性の背後で、女性たちがいかに活躍し、またどんな想いを抱いていたのか――。著者の広範な知識と深い洞察力は、時代を超えて、遠いフランスの地へと我々を誘ってくれます。

本書はそんな著者が、女性の肖像画を通して、18世紀のフランスに生きた女性たちの物語を浮き彫りにした名著です。その中には、もちろんヴィジェ・ルブランをはじめとする女性画家たちが描いた王妃マリー=アントワネットも多くの図版とともに登場します。ページを繰ると、まだオーストリア王女だった時代の12歳頃のあどけない表情を浮かべるマリー=アントワネットが、威厳溢れるフランス王妃へ、そして母へと成長していく様子を、つぶさにたどることができます。ひとりの女性がまるでさなぎから蝶へと変身していく道のり、そして彼女の波乱の人生が、カンヴァス1枚を隔てて向き合った女性画家たちの想いとともに綴られています。

本書にはマリー=アントワネットのほかにも、ヴィジェ・ルブランをはじめ、この時代に活躍した女性画家、ルイ16世の妹で、最後まで王の一家と運命をともにしたエリザベート、王妃の女官としてあつい信頼を得ていたランバル公妃、王妃とライバル関係となったデュ・バリー夫人など、18世紀のフランス宮廷を華やかに彩った女性たちが、次々と登場。ひとりのモデルを複数の画家たちがどう描き分けたかに加え、書簡や本人の言葉などの資料も掲載しているので、美術書としても、歴史書としても楽しめる一冊です。