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セーヴル国立陶磁器美術館 Musée national de Céramiqueマダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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このミュゼでは、フランスの陶磁器のモデルとなった東洋陶磁器の類い稀なコレクションも所蔵していますから、その素晴らしい作品の数々をじっくりとご覧になってください。紀元前2000年よりカオリンを含む白い粘土で作られていた中国磁器は、3世紀にはシルクロードを通じ、7世紀には海路を経て輸出されていました。そしてまず中東、次いで西洋に影響を与え、同じものを作り出そうという模索がなされるようになったのです。青磁と同じ青緑色を背景にした大きな展示ケースが、素晴らしい中国磁器を引き立てています。中でも、直径60cmを超える大皿(1325年頃)は秀逸で、コバルト酸化物をベースに青で描かれたアラベスクと花々(菊と牡丹)の装飾がとても印象的です。

15世紀後半には、中国の陶工は、鮮やかな色彩(緑、赤、紫、黄)の釉薬を開発し、ヨーロッパからの注文で輸出用の品を作るようになりました。紋章やアルファベットがあしらわれた皿も登場するのは、そのためです。また、日本で15世紀以降に発達した茶の湯を紹介する展示ケースもあります。茶の湯を愛する人たちは、ここに展示してあるようなざらざらした陶土で作られた飾り気のない茶碗を好みました。日本でカオリンが発見されたのは、1610年、有田においてのことでした。そして1680年には、赤と青の釉薬に金を混ぜることで、「伊万里錦手」と呼ばれる玉虫色に輝く素晴らしい装飾を、非常に大きい作品に施すことが可能になりました。

青い壁の展示室には、イスラムの美しい陶器が展示されています。最初はイランの陶器コレクションから。アリ聖廟の光り輝く装飾に刻まれた一対の円盤のように、コーランの一節を記したり、その世界を象徴したりするようなモチーフが施されたテラコッタをはじめとする珍しい品々をご覧になりながら、イスラム千年の歴史をたどることができます。フランスにおけるこの分野のコレクションとして最も完璧なものは、トルコの陶磁器です。15世紀から17世紀、イズニクの工房では、宮殿やモスクを装飾するための美しい陶器のタイルや高級な食器類が制作されていました。もっとも古い皿(1480年頃)は、白地に青で描かれたアラベスクや中国のモチーフで飾られています。1530年頃、陶工たちは有名なトルコ石の青色を見つけ、そこにほかの色(紫、茄子紺、黄緑)を加えました。また1560年には、このミュゼでご覧いただけるイズニクの素晴らしい花模様の装飾が施された皿(1575-1580年頃)に見られるような有名な赤も使われるようになりました。

ファイアンス陶器の技術は、アラブの陶工が発見し、マヨルカ焼とともにイタリア、とりわけフィレンツェにおいて15世紀から16世紀に発展しました。ボッティチェリ(1444-1540頃)の《ヴィーナスの誕生》(1485年)などの有名な絵画作品を模した作品など、マヨルカ焼では、贅を尽くした品々が制作されたのです。メディチ家の人々も中国磁器に魅せられ、それを真似るような作品を作らせました。この展示コーナーでは、ジローラモ・デラ・ロッビア(1488-1566)作とされる美しいファイアンス陶器の彫像《幼子イエスを抱く座る聖母》(16世紀)もご覧くださいね。

フランスでは同時期(16世紀)に、重要な陶工ベルナール・パリッシー(1510-1590)が、釉掛けの技法や粘土の色、動物(蛇、魚など)の型取りといった新たな技法を実験し、ここに展示されている《“田舎風の陶器装飾”のついた大皿》(陶器、フランス、1580-1630年)のような、動物や植物をとても写実的に描いた装飾を発明しました。

次は、風格ある階段を通って2階へと参りましょう。踊り場ではセーヴル製陶所で1825年から1850年に製作された、素晴らしい陶板絵をご覧ください。ティツィアーノの作品をもとにジャン=フランソワ・ロベールが制作した《ティツィアーノの鏡の前の女》(1826年)は、本物の絵画と見まがうほどの出来映えです。


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