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ブランクーシのアトリエ─ポンピドー・センターマダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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その隣には磨かれたブロンズ製の《レダ》(1926年)が、車輪のついた黒大理石の台座と、ステンレスの円盤の上に置かれています。アトリエの中央にひとつ置かれたこの作品はモーターで動き、鏡にその影や光のゆらめきを映し出すことで、作品としての不思議な力を増大させています。作品が刻々と姿を変えゆくのです。

ふたつ目のアトリエでは、「雄鶏」や「鳥」「子ども」といった主題が再び現れます。暖炉の前のテーブルに置かれているのは、どっしりした重量感とともに軽やかさも感じさせる《アザラシ》(1943-1946年)。その前方では、頭の上で髪をシニヨンにまとめた厚ぼったい唇の《金髪の黒人女 II》(1933年)が、木と石の3つの台座の上で危ういバランスを保っているようです。ハンガリー出身の女性画家《ポガニー嬢》は、1912-1913年と1920年のふたつの肖像で表現されています。顔の中で大きな場所を占めるふたつの巨大な盲目の瞳が印象的です。

彫刻とともに、15区に実際にあった、さまざまなアトリエの当時の状態を写した古写真をご覧になってくださいね。

3つ目のアトリエには、ブランクーシの作業台や石膏、大理石、石、木を彫るさまざまな道具や鍋、滑車のついた紐、ノコギリ、ヤスリなどがあります。中2階の下には、ヴァイオリンとギターがあり、音楽家のエリック・サティ(1866-1925)も参加したという賑やかな夜会を思い起こさせてくれます。左手には自分が使用したステッキ、ゴルフバッグ、パレット、自らの彫刻を撮った写真などが展示されています。

4つ目のアトリエは、鋳型や石膏で型取りした作品の置き場所となっています。ここには《空間の中の鳥》や《新生児》の石膏があります。中央には灰色大理石の鳥の習作が、2つのスツールと板でできた作業台の上に置かれています。アトリエの奥には、ブランクーシが制作中に参照したという写真資料も展示されています。

これらのアトリエをお訪ねになれば、ブランクーシの作品を貫く美学、つまり、形態を抽象化し、純粋化するために、ブランクーシが行った極めて革新的な探求が明らかになることでしょう。つまり、このアトリエは、彫刻と台座の補完性や置かれる環境の中での作品の統一性をブランクーシが重視していたことを証明すると同時に、実演してみせてもいるのです。マルセル・デュシャン(1887-1968)、エリック・サティ、マン・レイ(1890-1976)と親しい友人だったブランクーシは、その空間の認識において、1950年以降の現代彫刻の多くに影響を与えることになるのです。

友情を込めて。

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Update : 2015.2.1

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