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次に、「セザンヌからジャコメッティまで」のメイエ・コレクションが続きます。これはセザンヌに連なる現代作家たちの作品のコレクションとしては、過去100年で最も豊かな寄贈と言えましょう。フェルナン・レジェ(1881-1953)のキュビスムの作品《赤い植木鉢》(1926年)は、植木鉢、金属の花、ギターといった品々を、極限まで純化して描いた静物画です。ピカソの《バルコニーの女性》(1937年)は、幾何学的な線描と恋人マリー=テレーズ・ワルテル(1909-1977)を描く曲線、そして彼女の顔の黒と白がコントラストを成しています。ピエト・モンドリアン(1872-1944)は、《赤、黄、青のコンポジション》(1922年)で、あらゆる表現を排し、抽象へと向かっています。
この有名なコレクションのハイライトは、アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)の作品にあてられた展示室です。1940年から1969年の間に制作された絵画と彫刻19点が展示されており、天井からの照明が作品を引き立てています。とりわけ糸のように細いラインが動的に表された《転倒する男》(1950年)は見事です。中央のパネルの、あらゆる技巧を剥ぎ取った《ディエゴの頭部》(1962年)は、視線が描かれておらず、正面から見た硬直した姿勢やモノクロの暗い色彩にもかかわらず存在感を放っています。
最後の展示室にはオランダの画家ブラム・ヴァン・ヴェルデ(1895-1981)の3点の絵画が展示されています。《無題》(1948年)は色彩の讃歌と言えましょう。ニコラ・ド・スタール(1914-1955)の絵画2点のうち《サッカー選手》は、人物のシルエットが並置された平塗りの色彩で表現されています。

庭のある階まで降りて、彫刻のギャラリーへと参りましょう。マルタの聖ヨセフ教会(12世紀)の横側に向かって開いた大きな窓によってとても明るい展示室です。18世紀、19世紀の大きな彫刻に加えて、フランソワ・トルフェム(1820-1888)作のミラボー(1749-1791)のとても美しい胸像があります。革命家で政治家のミラボーは指を前に突き立て、威厳のある様子で表現されています。偉人たちを表現した数多くの白い胸像が赤い壁を背景に際立ち、中にはセザンヌの胸像もあります。

地下には珍しい考古学コレクションもありますから、お見逃しになりませんよう。紀元前3世紀に南プロヴァンスに暮らしていた民族ケルト・リグリア人の有名な頭部の彫刻を見ることができます。地下にはまた、14〜18世紀の古い絵画のコレクションも展示されています。フランスの画家(フォンテーヌブロー派、ルナン、リゴー)、北方の画家(ルーベンス、レンブラント)、イタリアの画家(グエルチーノ)などの作品がありますが、中には、人生のさまざまな時期、例えば老いをテーマにしたものもあります。この美術館のマスターピースの、レンブラント(1606-1669)の頭にベレー帽をのせた《自画像》(1659年頃)は、皺の刻まれた顔が薄明かりから浮き出ていて、画家に死が近づいていることを思わせます。

美術館のすぐ近くには、エクスの建築の至宝ペニタン・ブラン礼拝堂があります。控えめな装飾の素晴らしい礼拝堂で、ジャン・プランク・コレクションが展示されています。ジャン・プランクは、エクス=アン=プロヴァンスの町や、彼が絶対的な指標として崇めるセザンヌへのオマージュとして、ここにコレクションを委託しました。モネ、ヴァン・ゴッホ、ラウル・デュフィー、《帽子をかぶった女性》(1939年)をはじめとする15点のピカソなど、近代芸術の主要な作品300点から成るコレクションが、礼拝堂の中で見事に展示されています。自分自身も画家だったジャン・プランクは、セザンヌの痕跡のあるサント・ヴィクトワール山のふもとに居を定めました。プランクは同時代の有名画家ピカソ、ジャコメッティ、そして避けて通ることのできないアール・ブリュットの画家デュビュッフェ(1901-1985)と親交を結んでいました。プランクの作品は《青、白、赤のコンポジション》など何点かが2階に展示されています。デュビュッフェの《町の連続体》は3階に展示されており、ここでは筋かい骨のある素晴らしい丸天井も見ることができます。

また、セザンヌに着想を与えた景色や場所を見つけ感慨に浸るには、市が整備した散歩コースをたどってみることをお勧めします。セザンヌの生家から最後の住居までをたどります。

最後に、歌がお好きな方のために、毎夏、ここでオペラとクラシックのフェスティバルが開催されることもお知らせいたします。ヨーロッパで最も大規模な音楽フェスティバルのひとつですから、ぜひ、ご訪問なさってみてください。

友情を込めて。

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Update : 2017.2.1

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