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アルル県立古代博物館マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。バックナンバーを読む
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海と水の神ネプトゥヌス像(2世紀後半-3世紀後半)とともに、船頭をはじめとする海上貿易に関わるさまざまな職業も紹介されています。石棺にオリーブ収穫の場面が描かれていることからも分かるように、農業も古代ローマ人の生活で重要な役割を果たしていました。アルル近郊で発見された製粉のための水車の模型は、水車の機能を説明しています。

見学コースの最後には、在りし日のままの美しさを保った素晴らしいモザイクをご覧ください。これは帝政期、ローヌ川の右岸にあったいくつかの邸宅の豪華さとその財力を物語っています。中でももっとも素晴らしいのはおそらく《アイオンのモザイク》(2世紀末)でしょう。大きさ、保存状態、幾何学的装飾や、時の神アイオンを描いた中心的なテーマ、どれをとっても秀逸です。アイオンは左手に笏を、右手に黄道帯を持って、金の王座に座っています。

博物館の最後の部分は、葬儀と石棺に当てられ、とりわけ初期キリスト教の素晴らしいコレクションを展示しています。古代ローマ時代の石棺のいくつかは、アルル近郊のガロ=ロマン時代の墓地アリスカン由来のものです。古代ローマ人たちは、遺体を火葬し、遺灰を骨壺に集めて納骨していましたが、社会的地位に応じて高価な骨壺が用いられました。そして紀元2世紀から、裕福な人々は、イタリアやギリシアから取り寄せた彫刻を施した豪華な石棺に埋葬されるようになりました。中央の通路の右側にある《パイドラーとヒッポリュトスの石棺》をはじめ、石棺に施された彫刻は、図像的に非常に豊かで、仕上げの質も高いものでした。ベッドの形をした蓋には、故人が横たわった姿で描かれ、衣服の布のひだが表現されています。棺の中央には、アテナイ王テセウスの息子ヒッポリュトスの物語が描かれており、ヒッポリュトスは英雄として裸体で表現されています。4世紀にキリスト教が普及すると、石棺に描かれるテーマも変わり、聖書の主題やキリストの生涯に関わる場面が描かれるようになります。貝の形をしたメダイヨンに夫婦の肖像が描かれた素晴らしい石棺には、聖書の物語が見て取れます。

博物館見学に引き続き、古代ローマ世界への探索をお望みの方は、オルチュの庭まで足を延ばしてみてください。ここには古代のモデルに従って競技場が整備されています。

そしてもし考古学や、古代ローマ時代のブドウ栽培やワイン醸造にご興味があれば、ボーケール市のマ・デ・トゥレルへ行かれることを強くお勧めします。ここではわたくしの友人エルヴェ・デュランが、彼の所有地で行った考古学調査、とりわけ陶器の焼き窯のあるアンフォラ制作のアトリエを発見したことを情熱的に話して聞かせてくれました。発掘品が展示され、木製のハンドルのついた圧搾機や甕、アンフォラ、籠などとともにガロ=ロマン時代の洞窟も復元されています。そして、考古学者たちの調査のおかげで、古代ローマ時代のブドウ畑を再現し、ラテン語の文書に記されていたワイン醸造法に忠実に従ってワインをつくることができたのです。毎年、9月の第2日曜日には、古代ローマ式のブドウの収穫を見学できますので、ぜひ、ムルスム、トゥリキュラエなどの名を冠された、さまざまな古代ワインをテイスティングなさってみてください。

友情を込めて。

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Update : 2017.12.1

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