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東インド会社博物館マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
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続いての展示室は、最も大きな船を迎えられる港として、造船作業所、倉庫、ロープ製造所といった港湾のインフラの整った、造船業の中心としてのロリアン港の発展に充てられています。1720年まで、ロリアン港は船舶の修理のための港でしたが、1730年以降は造船業が本格化し(1769年の海軍工廠の造船台の模型をご覧ください)、ここに職人、行員、船乗りが集まりました。展示ケースでは、ノコギリや斧、製図用コンパスなど造船に必要なさまざまな道具が紹介されています。ロリアンの町は飛躍的に発展し、18世紀末には2万人の人口を数えるようになりました。建築家ジャック・ガブリエル(1667-1742)による海軍工廠の素晴らしいプランを示す模型をご覧ください。けれども今、往時のこの港の壮麗さを今に伝える建物はほとんど残されていません。ほとんどが第二次大戦中に破壊されてしまったのです。

次いで、船旅や船上での暮らしについての展示室があります。中央には、1759年に建造された軍艦「アルトワ伯号」(1200トン、大砲50砲)の模型があります。ひと口に甲板と言っても、船倉、中甲板、第二甲板、上甲板と実にさまざまであることがよく分かります。船上での活動に応じて役割分担された乗組員のための場所はほとんどありません。それでも将校たちは、それ相応の快適さを享受することができたようです。将校たちは皿に載せた料理をテーブルで食べましたが、水夫は深皿で食べハンモックで眠ったのですから。そのほか、パン職人、食肉係、記録係といった船上の職種についての説明をする小さな展示ケースもありました。乗組員は100人少々で、船上での生活は過酷でした。栄養失調や不衛生な環境、病気などのせいで多くの人が亡くなりました。アジアへの航海は16〜22ヵ月にも及び、そのうちの3分の2を海上で過ごさねばなりません。出帆は、風向きを考慮して10月半ばから4月半ばで、帰還は12月から3月。フランス船は、インド洋の海外領土マスカリン諸島(現在のレユニオン島やモーリシャス島にあたります)に停留することのできるルートを取って、アジアへ向かいました。

航海に際して、アフリカの植民地は計り知れない役割を果たしました。ヨーロッパ人は、15世紀にはアフリカ西岸部に沿って要塞を築きましたが、フランス人は1638年にセネガルのダカール近く、ゴレ島を船舶の待避所とします。1746年の島の地図には、島を取り囲む要塞が記されています。象牙、金などの商品取引に加え、この島からは奴隷がアメリカに向けて輸出されていました。1720年以降、東インド会社は、黒人奴隷売買を独占したのです。ロリアンから出航した東インド会社の奴隷船はおよそ152艘で、おぞましい状況の中、ふたり1組にして鉄の足かせで繋がれた4万5,000人の奴隷が運ばれたと見積もられています。14世紀から19世紀には、なんと1,100万人のアフリカ人がアメリカ大陸に向けて強制的に連れ去られたのです。2001年、フランス議会は黒人奴隷売買を「人類に対する犯罪」と認めています。

マスカリン諸島に関連する小さな展示室もあります。ここをご覧になれば、マスカリン諸島は行政官ベルトラン=フランソワ・マエ・ド・ラ・ブールドネ(1699-1755/アントワーヌ・ブノワ・グランクール[1748-1823]による18世紀の肖像画があります)の統治下に、アフリカ系住民の労働力をつかい、コーヒー、米、トウモロコシなどの食糧用の作物の栽培が発達したことがよく分かります。ジャン=ジョゼフ・パテュ・ド・ローズモン(1767-1818)による《ブルボン島でのコーヒー栽培》(19世紀前半)は、その様子を描いたものです。

再び受付を通り、テオドール・グリュイエールによる南インド総督フランソワ=ジョゼフ・デュプレクス(1697-1763)の巨大な彫刻に導かれるようにして、今度はインドと中国の拠点についての博物館の第二部へと参りましょう。
1617年、フランス人はインド南西の沿岸ポンディシェリに拠点を定めます。ここが東インド会社の全アジアへの貿易基地となりました。その様子が《ポンディシェリの眺め、東インド会社の倉庫、海軍本部、総督の家》(18世紀)に見て取れます。コットン生地やモスリンなど、インドからもたらされた鮮やかで繊細な布は、商品として大成功を収め、服地や装飾用生地として流行します。《ライオンのキルティング布団》(インド、18世紀前半)はその一例です。

Update : 2019.12.2

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