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同じ展示室内には、1145-1155年頃、そして1220-1225年頃に作られたシャルトル大聖堂の彫刻も展示されています。次第に写実性を増していく聖像の表現から、彫刻技術の発展を見ることができます。12世紀、ゴシック様式の頂点をなすのは、ランスのノートルダム大聖堂のエヴァの像と言えましょう。簡素な衣を身にまとい、原罪の象徴であるりんごを咥えたドラゴンを抱いています。ゴシック・フランボワイヤン様式の作例としては、ブールジュのジャック=クール邸のものが展示されています。ジャック=クールとその妻がとても自然な姿で窓辺にいるところを表現した有名な彫像もあります。
そして、並行した展示室にはルーアンの大時計(16世紀)のポルタイユ(正面)や、17世紀から18世紀の鋳造複製などのルネサンス芸術が展示されていますが、中には1781年に焼失したパリ・オペラ座に代わるものとして、建築家ミュリー(1755-1794頃)が、1781-1785年に設計したプロジェクトの模型もあります。こちらは実際には建造されませんでした。

素晴らしい景色を望むエレベーターに乗って2階へと参りましょう。1階の鋳造複製のギャラリーからの導線を考えると、まずは壁画のギャラリーに直接行くのがおすすめです。複製の保存の観点から照明を落としたこのギャラリーでは、瞑想にふさわしいような雰囲気の中、作品を鑑賞することができます。

1937年から1962年にフランス記念建造物美術館の初代館長を務めたポール・デシャンは、多くの壁画が失われ、あるいは保存状態が悪いことを確認し、もっとも重要な作品の複製を、実物大で制作させることを決意しました。こうした複製作品は、一般に現場に置かれた作品よりも良い状態にあります。ギャラリーには、ロマネスク様式、ゴシック様式、ルネサンス様式の壁画の複製が80点、ステンドグラスの複製が5点あります。ステンドグラスは、制作時の作品の状態になるように修復されました。複製物の中でももっとも目を引くのは図書館の丸天井の壁画です。これは、ロマネスク期(11世紀末から12世紀初頭)の素晴らしい黄土色の壁画、サン=サヴァン=シュル=ガルタンプ(ヴィエンヌ県)の古い大修道院付属教会の丸天井を複製したものです。創世記と出エジプト記の61のエピソードが描き出されています。

右側の細い通路へ進む際には、ブールジュのサン=テティエンヌ大聖堂のステンドグラスをご覧ください。純潔さを表す白いマントを身にまとった預言者ヨエルが描かれています。それから、小部屋へと入って行きましょう。サン=テティエンヌ・ドーキシエール大聖堂(ヨンヌ県)の地下納骨堂には、白い馬に跨り、翼を広げてやはり白い馬に乗った4人の天使に囲まれた騎士の姿のキリスト(12世紀初頭)という非常に珍しい主題が描かれています。ノアン=ヴィック、サン=マルタン教会(アンドル県)の内陣には、左側の壁に聖マルタンの生涯が描かれています。

またサン=ニコラ・ド・タヴァン教会(アンドル=エ=ロワール県)の地下納骨堂に入ると、丸天井の低さや、柱頭のついた円柱の太さなど、その忠実な再現のリアリティーに心を奪われます。ふたつめの円柱に描かれた《竪琴を弾くダヴィデ》(12世紀前半)のようにテーマが特定できるものもあります。ダヴィデの姿勢の自然な表現にご注目ください。

ロマネスク期の主要なステンドグラスのひとつは、サン=ピエール・ド・ポワティエ大聖堂(1163-1173年頃)の巨大な磔刑図です。またピュイ=アン=ヴレのノートルダム大聖堂のフレスコ画は《キリストの変容》(13世紀初頭)をテーマにしており、青い背景に人物がはっきりと浮き出て見えます。ギャラリーの中央には、サン=テティエンヌ・ド・カオール大聖堂(ロット県)の丸天井の驚異的な複製があります。

来たルートを引き返し、近現代建築のギャラリーへと参りましょう。ここでは非常に教育的な展示法で、建築史の知識を深めることができるようになっています。光に溢れたギャラリーは、「構想することと建てること」「建築と社会」というふたつのテーマに分かれています。順路はまず、1851年のロンドン万博のためにジョゼフ・パクストンによって作られた、鉄とガラスによる最初の大規模な建造物であるクリスタル・パレスの模型と、オスマン男爵によるパリ大改造(1851-1870年)の模型によってスタートします。

Update : 2020.4.1

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