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ボナパルト家の邸宅マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。バックナンバーを読む
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2階にある「母君の間」には、1796年以降に購入されたオリジナルの家具の一部が残っています。椅子20脚、ソファー1脚、大型安楽椅子2脚、長椅子1脚は、すべてルイ16世時代のもので、花柄の赤いダマスク織の布が張られています。また、ルイ15世時代のゲーム用テーブル2台、19世紀の小型円卓とピアノフォルテもあります。天井は豊かな装飾が施され、中央には18世紀のヴェネツィアングラスのシャンデリアがあります。

「ボナパルト夫人の寝室」では、赤いダマスク織の布が壁に張られ、ルイ15世時代の家具類が置かれています。ベッドと肘掛け椅子、暖炉の前には衝立が置かれ、天井には色彩豊かな花のモチーフが施されています。その隣の「ナポレオン生誕の間」は、黄金色の布張りの壁に、当時のままの絵画が飾られています。ナポレオンはまさにこのルイ16世様式の長椅子の上で生まれたのかもしれません。たれ板のついた書斎机(18世紀末)はマッジョリーニによるもので、ラピスラズリ、めのう、オニキスといった鉱石で装飾されています。チェストの上には、マホガニーと黒檀でつくられたキリスト降誕の場面(18世紀末)がありますが、これは、ナポレオンが母のために中東から持ち帰ったものなのだそうです。その右手には、部屋の隅の食器棚をはじめ、当時の配置のまま残されたダイニングルームがあります。栗材の13脚の椅子とソファーは総裁政府時代のものです。

この邸宅の中でももっとも美しく、もっとも贅沢な空間、大回廊へと参りましょう。床はウォールナットの美しい寄木張り。洗練された家具類は総裁政府時代のもので、黄色いダマスク織の布が張られたソファー1点と、肘掛け椅子18点。そして、パーティともなれば両側に燭台のついた16の鏡で、この大回廊は照らされるのです。マッジョリーニ作の2点のイタリア製チェストは、極めて洗練されたもので、1点には、鉱石が埋め込まれ、中央パネルは雪花石膏の上に絵が描かれています。続いて、シンプルな内装の一続きの部屋があります。「揚戸のある部屋」は、1799年にボナパルト家が密かにコルシカからフランスへ亡命した際に使われた揚戸に由来してそう呼ばれています。次の部屋には、ウォールナットのベッドとルイ16世時代のマホガニーの整理ダンスがあります。

ナポレオン3世の部屋には、ナポレオン3世をローマ皇帝の姿で表した、ブロンズに銀箔を施した素晴らしい胸像があります。ナポレオン3世にとってコルシカ島は政治的に重要な場所で、それゆえ彼は、コルシカの経済的発展に尽力しました。1852年、彼は空っぽだったこの家を買い取り、修復し家具をそろえ、生き返らせました。天井の装飾はこの時代に施されたもので、皇帝と皇后の肖像画をいくつも置きました。ヴィンターハルター(1805-1873)による有名な公式肖像画に基づく2点のリトグラフ(1854年)があります。素焼きの魅力的な彫像《皇太子とその犬ネロ》(1864年以降)は、7歳の皇太子を表したもので、ジャン=バティスト・カルポー(1827-1875)作のオリジナル(オルセー美術館所蔵)を縮小したものです。《執政政府100周年の冠、1900年》は、金箔を施した銀製で、1899年に執政政府100周年を記念して作られた金製の冠のレプリカです。
最後の展示室には、「フランスの皇室となったボナパルト家」の家系図と、ナポレオン1世のデスマスク(1821年)が飾られています。デスマスクは現在知られているものの中で、もっとも古いもので、わたくしは感動を禁じ得ませんでした。そして締めくくりは、アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾン(1767-1824)のアトリエによる豪華な肖像画《聖別式の衣装を身につけたナポレオン1世》(1827年)です。地下には、コルシカの田園生活に関する品々(オイル搾り機、蒸留器、昔の圧搾機、甕など)の展示もあります。

ボナパルト家の邸宅は、時代を経て内装が変わったとはいえども、すべてのナポレオン崇拝者にとっての伝説の地、さらには巡礼の地ともなっています。偉大なナポレオンはここで生まれたのです。彼のベッドをはじめ、邸宅にある品々は非常にシンボリックな力を放っているのです。

この邸宅からレティツィア広場の方に出ると、心地よい小さな庭があります。E.-J.ヴェジアン(1811-1832)作の小さいながらも魅力的な《ローマ王の胸像》(1936年)をぜひ、ご覧ください。

友情を込めて。

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Update : 2020.11.2

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