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ブザンソン美術・考古学博物館マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
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一見すると迷宮のような印象を受けるミュゼですが、スロープに沿ってスムーズに見学をすることができます。1階の先史時代からローマ時代までの古代部門には、神々しいほどの力強さを備えた3本角の雄牛《アヴニエの雄牛》(1世紀末)があります。筋肉や静脈が驚くほどリアルに表現された素晴らしい彫刻です。また、《ネプチューンの勝利》(2世紀)は、並外れて大きなモザイクで、この種の作例としては、これまでに知られている中で最大級のものです。また、美術館の2階にある「エジプト学」部門も必見です。ここには、アモン神殿の神官であったセラモン(第21王朝、紀元前1069〜945年)のミイラが納められた、とりわけ豪華な装飾の石棺があるのです。

それでは、話を1階に戻して、年代別の作品展示をたどっていきましょう。冒頭では、17世紀末から1960年までの主要な寄贈者たちへのオマージュとして、彼らの肖像画が飾られています。まずは、ボワゾ司祭、国王ルイ16世の建築家ピエール・アドリアン・パリ、画家ジャン・ジグー、そしてジョルジュ・ベッソンです。

最初は中世からルネサンス期の展示室。ここには、16世紀ヴェネツィアのイタリア絵画を紹介するセクションがあり、ティントレット(1518/1519-1594)やティツィアーノ(1488/1489-1575)による素晴らしい男性肖像画が展示されています。暗い背景に4分の3正面の構図でモデルを描いたティツィアーノの作品(1515-1520年頃)では、細かいプリーツの入った襟ぐりの白さが、男性の高貴な顔立ちを際立たせています。フランスに所蔵されている画家ブロンズィーノ(1503-1572)の最も優れた作品のひとつである《死せるキリストへの哀悼》(1508-1510年頃)の展示は秀逸で、その空間はまるで礼拝堂のよう。十字架から降ろされ、聖母マリアの膝の上にいるキリストを描いたこの作品は、メディチ家のコジモ1世(1519-1574)の依頼により、フィレンツェのシニョリーア宮殿のために描かれたもの。貴重なラピスラズリブルーを中心とした淡い色調で滑らかに描かれています。

続くセクションでは、ルーカス・クラナッハ(1472-1553)の絵画5点が展示されていますが、これはフランスで最も重要なクラナッハ・コレクションのひとつです。クラナッハの工房は家族経営で、そこで作られた作品には、見紛うことなきスタイルがあります。《アダムとイヴ》(1508-1510年頃)に描かれたイヴの、ウェーブのかかった髪とほっそりとした身体──それはまさに、アダムを堕落させる誘惑者にふさわしい美しさといえましょう。

スロープを通って17世紀のコレクションへと歩を進めましょう。ここでは、ヨーロッパのさまざまな流派による「燃える都市」を描いた絵画を見ることができます。踊り場では、フランスの画家シモン・ヴーエ(1590-1649)の《受難の道具を運ぶ天使たち》(1624年)や、ルーベンスのアトリエで働いていたフランドルの最も重要な画家のひとりであるヨールダンス(1593-1678)が、老人の顔を2つの角度から研究した《老人の頭部の二重習作》(1618-1621年頃)などの作品を鑑賞することができます。

さらに2階のスロープを進むと、フラゴナール(1732-1806)、ユベール・ロベール(1733-1808)、シャルダン(1699-1779)、そしてフランソワ・ブーシェ(1703-1770)などの18世紀フランス絵画の展示にたどり着きます。ブーシェは、東洋美術を数多く蒐集しており、10点からなる「シノワズリー」(1742年)は、タピスリーの下絵と小型絵画の中間のような作品で、18世紀のヨーロッパの東洋趣味を反映しています。

Update : 2021.11.4

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