ルーアン美術館
 
パリの西、ノルマンディ地方のルーアンはセーヌ川の交易で早くから栄えた町で、
大聖堂を描いたモネをはじめとした印象派の面々、
その他にもコロー、ターナー、ゴーギャンなどがその景色を描き、ルーアン派と言われる一派も生み出しています。
ルーアン美術館は芸術に理解のある土地にふさわしく、各時代の傑作をバランスよく擁した総合的な美術館です。
ヨーロッパの絵画史を辿るにふさわしい、充実したコレクションを誇っています。
©Andreas Licht
 
15〜16世紀西洋絵画 伊仏西の17〜18世紀絵画 19世紀とルーアン派 肖像画、近現代美術
   
アングルやジェリコー、ドラクロワの名作 ルーアンにちなんだ作品が揃う19世紀絵画
▲アングル《エモン夫人の肖像》/ルーアン美術館所蔵
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 19世紀の名作の紹介はアングル(Jean Auguste Dominique Ingres)から始めましょう。アングルはローマ賞を受賞してイタリアで絵を勉強しますが、この美術館には、その前に描いた《エモン夫人の肖像》別名《麗しのゼリー》があります。すでにアングルの端正な画風を見ることができます。

 その次はルーアンで生まれ、32歳で早世した画家、テオドール・ジェリコーの部屋です。ルーヴル美術館にある《メデュース号の筏》を描いたことで世界的に知られるジェリコーは、大変な馬好きでもありました。
最後は落馬が原因で亡くなっています。この部屋にある13枚の油絵のうち《奴隷によって捕まえられた馬》など6枚が馬の絵です。またここにはジェリコーの珍しい彫刻や、リプシッツ(Jacques Lipchitz)などの作家がジェリコーを偲んで創作した作品もあり、ファンには嬉しい一室となっています。
▲ジェリコー《奴隷によって捕まえられた馬》/ルーアン美術館所蔵
© Andreas Licht
     
 続いて帝政時代の部屋があり、ネオクラシックな作品や家具が飾られています。特筆すべきはその次の間のダゲール(Luis Jaques Mandé Daguerre)の《ロスラン聖堂の内部》です。ダゲールは写真の創始時代に貢献した写真家でダゲレオタイプの発明者として知られていますが、画家でもありました。光を捉える敏感な目をこの絵から感じることができます。
 さて次ぎに控えているのは、19世紀という枠組みに捉われず、ルーアンに縁の深い作品を集めた「ジャンヌ・ダルクの部屋」です。ジャンヌ・ダルクは1431年にここルーアンで火あぶりの刑に処されたのです。
▲ジャンヌ・ダルクの部屋。
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 その場所は今でも残されており、命日には市民が花を手向けます。ここには奇跡の少女にちなんだ作品が時代を問わずに集められています。この部屋にはモロー(Gustave Moreau)の作品もあります。その向こうは19世紀のルーアンの景色や人々の生活が描かれた写実主義の部屋があり、コローの風景画が2枚あります。
     
 そしてこの美術館のハイライトのひとつともいえるフランソワ・ドポー(François Depeaux)のコレクションが登場します。ドポーはシスレー(Alfred Sisley)の友人で、印象派のパトロンでもありコレクターでした。シスレー、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)、ピサロ(Camille Pissarro)、フレション(Charles Fréchon)などの作品が並んでいますが、素晴らしいのはやはりモネ(Claude Monet)の作品です。
▲印象派の部屋
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▲クロード・モネ《グレイのカテドラル》/ルーアン美術館所蔵
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モネはルーアンの大聖堂をモデルに30点の連作を残しましたが、その中の一枚《グレイのカテドラル》がここに飾られています。またモネには珍しく躍動感あふれる《1878年6月30日祝日のサン・ドニ通り》も見逃せません。
 ルーアンのあるノルマンディ地方はル・アーブル、オンフルール、エトルタ、ジヴェルニーなど、印象派の画家たちに愛された場所がたくさんあります。それらの画家たちに触発されて生まれたルーアン派と呼ばれる地元の一派による作品も、ドポーのコレクションの隣に展示されています。
また場所は少し離れていますが「壮観な部屋」というスペースがあり、そこにはドラクロワの大作《トラヤヌス帝の裁定》やダヴィッド・ダンジェ(David D'Angers)の《ボンシャン》のオリジナルの石膏像があります。
 19世紀作品の最後は現代的な風俗を描いたカイユボット(Gustave Caillebotte)の《カフェにて》で締めくくりましょう。
▲クロード・モネ《1878年6月30日祝日のサン・ドニ通り》/ルーアン美術館所蔵
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▲ルーアン派の部屋
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▲カイユボット《カフェにて》/ルーアン美術館所蔵
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文化人の肖像画コレクション、そしてデュシャン 洒脱な名作が並ぶ20世紀から現代まで
▲モディリアーニ《ショーウィンーの前にいるポール・ア レキサンドル》/ルーアン美術館所蔵
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 ジャック=エミール・ブランシュ(Jacues-Emile Blanche)は交遊関係が広く、たくさんの著名人の肖像を描きました。夭折の詩人ラディゲ(Raymond Radiguet)やコクトー(Jean Cocteau)の若き姿、音楽の6人組、詩人クローデル(Paul Claudel)、作家モーリヤック(François Mauriac)……。当時、一世を風靡したこうした文化人たちの肖像が、ルーアン美術館には数多く残されています。
 肖像画と言えば、モディリアーニ(Amedeo Modigliani)の貴重な2枚がここに展示されています。アレキサンドル家からの寄贈で、1枚が早期に描かれたもの、2枚目はモディリアーニの確立したスタイルが見える《ショーウィンドーの前にいるポール・アレキサンドル》です。またあまり見ることのないモディリアーニのデッサンなども数枚あります。
 それから彫刻家レイモン・デュシャン−ヴィヨン(Raymond Duchamp-Villon)の作品を見た後、その弟のマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)の部屋に移ります。《トランク》などデュシャンらしいユーモアに溢れたオブジェが並びます。またこの部屋の近くには、現代の作家で、パロディの手法も用いるアンドレ・ラフレ(André Raffray)がデュシャンの芸術家人生を覗き見したかのように描いた作品群が新しくお目見えしました。そういえば美術館のエントランスにあったのもラフレの《マルセル・デュシャンの瓶掛けの影》で、これは瓶掛けを天井から吊るして壁にその影を映し出したものでした。
▲ジャック=エミール・ブロンシュ《コクトーの肖像》/ルーアン美術館所蔵
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デュシャンに捧げるオマージュ作品で始まり、デュシャンの作品でルーアン美術館のコレクションはクライマックスを迎えます。
田中久美子(Kumiko TANAKA/文)/Andreas Licht(写真) ページトップへ
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ルーアン美術館
所在地
 
Esplanade Marcel-Duchamp 76000 Rouen
Tel
 
+33(0) 2.35.71.28.40
Fax
 
+33(0) 2.35.15.43.23
e-mail
 
publicsmusees@rouen.fr
開館時間
 
10:00-18:00
休館日
 
火曜・祝日
入館料
 
一般:3ユーロ
割引料金:2ユーロ
18歳以下:無料
URL
 
http://www.rouen-musees.com
ルーアン基本情報
  フランス北部、ノルマンディ地方の中心都市で、セーヌ・マリティム県の県都。古来、パリの外港として発展し、かつてはノルマンディ公国の主都であった。13世紀に建造されたノートル・ダム大聖堂は、フランス・ゴシックの代表作で、モネの連作のモチーフとしても知られる。また、15世紀にジャンヌ・ダルクが処刑された町で、ジャンヌ・ダルク教会やジャンヌ・ダルク博物館などがある。  
交通
 
パリ・サン・ラザール(St.Lazare)駅から在来線でルーアン・リヴ・ドロワット(Rouen Rive Droite)駅まで約1時間10〜30分。
ルーアン観光局
 
http://www.rouentourisme
.com/

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