ディジョン、その豊な芸術的土壌

フランソワ・ポンポンの彫刻群

大公たちが残した傑作群

ディジョン美術館
大公たちが残した傑作群
▲2代の大公の墓が並ぶ「衛兵の間」。奥がフィリップ豪胆公、手前がジャン無畏王夫妻のもの。

 ディジョン美術館のもうひとつの見どころは、なんといってもブルゴーニュ公国が栄えた時代の作品群でしょう。
 イタリア、スイス、ドイツなどの世俗画や宗教画などの中世の作品から、ルネサンス期のものなどが時代別、エリア別に分かりやすく分類されています。必ず訪れたいのが、シャンモル修道院にあったフィリップ豪胆公、その息子のジャン無畏王(Jean I/Jean sans peur)とその妻の二基の墓が展示されている「衛兵の間」です。

▲棺の上にあるフィリップ豪胆公の肖像彫刻。目を見開いたその姿は非常に写実的に表されている。

 豪胆公の墓の装飾はクラウス・スリューテル(Claus Sluter)とその甥の手によるもので、棺の横の白大理石に彫られているのは41体の喪服姿の葬列です。息子夫婦の墓は制作者は異なりますが、豪胆公のスタイルを踏襲しています。いずれも完成までに約30年間もかかっており、その豪華さ、緻密さにはため息が出るほどです。
 またこの部屋には金彩を施した素晴らしい祭壇衝立(ついたて)があります。豪胆公がシャンモル修道院のために注文したもので、当時の公国の栄華を偲ぶことができるでしょう。全体を見ると黄金に輝き、非常に華麗なものですが、彫られた人物を細かく見てみると、愛嬌のある表情が印象的です。こうした素朴な味わいがあることも、この時代の作品の魅力かもしれません。
 衝立の対面の壁には歴代の大公の肖像画などがかかっており、ファン・デル・ウェイデンが描いた金羊毛騎士団の首飾りをつけ、神妙な顔つきの≪フィリップ善良公の肖像≫が特に有名です。

▲みごとな衝立≪聖人と殉教者≫。14世紀後半。   ▲≪アントワネット・ド・フォンテット≫墓碑石彫 16世紀中頃、作者不詳。生命感溢れるブルゴーニュ彫刻の傑作。
 
▲ルイ14世の頭部彫刻もある「サロン・コンデ」。

 中世以降でも、18世紀のフランスの美術品や工芸品を集めたルイ16世様式の「サロン・コンデ」、またプリュドン(Pierre-Paul Prud'hon)が模したといわれる天井画の下に、ロマン主義の彫刻家リュード(François Rude)の≪ヘベとジュピターの鷲≫などが並ぶダイナミックな「彫刻の間」、18世紀後半のディジョンの「ゴラン家の居間」を再現した部屋なども見逃せません。部屋それぞれに特長があり、盛りだくさんな内容で見る者を決して飽きさせない工夫がなされています。宮殿を彩った名作の数々は、在りし日の公国の栄華の時を我々に語りかけてくれるのです。

▲「彫刻の間」。手前がリュードの作品。   ▲羽目の木彫細工品がみごとな「ゴラン家の居間」。

田中久美子(Kumiko Tanaka/文・写真)
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ディジョン美術館
  • 所在地
    Palais des Etats de Bourgogne(entrée Cour de Bar) 21000 Dijon
  • Tel
    +33(0)3 80 74 52 09
    +33(0)3 80 74 53 59
  • Fax
    +33(0)3 80 74 53 44
  • URL
    http://dijoon.free.fr/mba/acc-mba.htm
  • 開館時間
    <5月1日〜10月30日>
    9:30-18:00
    <11月2日〜4月30日>
    10:00-17:00
  • 休館日
    火曜日
    1月1日、5月1日、5月8日、7月14日、11月1日、11月11日、12月25日
  • 入館料
    常設展は無料
  • アクセス
    パリ・リヨン駅(Gare Lyon)からTGVで約1時間40分、ディジョン(Dijon)駅下車。ディジョン駅から徒歩

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