ジャン=ジャック・エンネル美術館

アカデミーの画家、ジャン=ジャック・エンネル

故郷アルザスとローマ賞受賞によるイタリア時代

▲≪アベルの亡骸を発見したアダムとイヴ≫ 1858年 ローマ賞受賞作品のエスキース 
© RMN - Photo : Franck Raux

 エンネルは1829年の3月5日、アルザス地方南部の町ベルンヴィラー(Bernwiller)に農家の息子として生まれました。中学在学中にデッサンの教師にその才能を見出され、ストラスブールで絵の勉強に励んだ後、県からの奨学金を受けパリのエコール・デ・ボザール(国立美術学校)へと進みます。美術学校やアトリエで伝統的な画法を身につけながら、美術館にも足繁く通ったエンネルは、とりわけイタリア・ルネサンスの芸術に強い影響を受けました。1858年、3回目の挑戦にして芸術家の登竜門であるローマ賞を受賞し、1864年までの5年間をローマのメディチ荘で過ごします。

▲≪ローマ、メディチ荘のテラス≫ 1860年
© RMN - Photo : Franck Raux

エンネルはローマ以外にもフィレンツェ、ヴェネチア、ナポリを訪ね、古代芸術やイタリア・ルネサンスに感銘を受けると同時に、イタリアの風景や日常における美にも魅せられ、風景画や風俗画を多く描きました。


サロン、アカデミー、公的場面における輝かしいキャリア

▲≪傘を持つ女性の肖像画≫1874年のサロン出品作。
© RMN - Photo : Franck Raux

 ローマから戻った後、エンネルは徐々にナチュラリストの傾向を見せますが、サロンでの思わしくない批評もあり長くは続かず、以降古代をテーマとした理想画を描くようになります。1870年代のサロンには古代文学の牧歌的詩歌や神話を想起させる作品を多く出品し、この時期エンネルは画家として高い名声を得ることとなりました。サロンや万博に定期的に出品された歴史画、宗教画の多くは国によって買い取られ、リュクサンブール美術館や地方の大型の美術館へと収蔵されます。またエンネルは個人コレクターからも人気の高い画家であり、引く手あまたな肖像画家としても当時際立った活躍をしました。
 1889年には芸術アカデミーの会員となり、1903年にはレジオン・ドヌールの二等勲章を授与されるなど、大変名誉のある、輝かしいキャリアを送ったエンネルですが、彼の作品はときに歴史的テーマの扱い方が自由過ぎると批判を受けることもありました。

▲≪サン・セバスチャン≫1888年のサロン出品作。
© RMN - Photo : Franck Raux

通常の歴史画がそうであるように、観る者に歴史を伝える装飾やコスチュームなどの細部の表現を、エンネルはカンヴァス上で忠実に行わなかったためでした。エンネルの作品を注意深く観察すると、ときに荒々しい大胆な筆跡がそのまま残されており、伝統的な画風の中にも、アカデミーの絵画らしからぬ近代的な要素を含んでいるのが印象的です。


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かつての趣を取り戻した19世紀の画家のアトリエ
アカデミーの画家、ジャン=ジャック・エンネル
寄贈、寄託による充実したコレクションとその見どころ

ジャン=ジャック・ エンネル美術館

  • 所在地
    43 avenue de Villiers 75017 Paris
  • Tel
    +33 (0) 1 47 63 42 73
  • Fax
    +33 (0) 1 43 80 00 82
  • URL
    http://www.musee-henner.fr
  • E-mail
    info@musee-henner.fr
  • 開館時間
    11:00-18:00
    *毎月第1木曜日は21:00まで開館
  • 休館日
    火曜、祝日
  • 入館料
    一般:5ユーロ
    割引:3ユーロ
  • アクセス
    パリの地下鉄3番線Malesherbes駅または2番線Monceau駅より徒歩

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