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コンピエーニュ城美術館

▲ナポレオン1世が作らせた庭園。
©A.de Montalembert
今日、コンピエーニュ城はいくつものミュゼを併設しており、そのうち第一帝政期(1804-1814)の美術館には、この時代としては珍しいことに装飾と家具調度品の一大コレクションが展示されています。もっとも、部屋の間取りや内装のいくつかはルイ16世とマリー=アントワネットの時代ものだということをお忘れなく。

それでは、列柱廊の間からミュゼ探訪を始めることといたしましょうか。この部屋から18世紀の見事な手すりがついた正面階段を上ると衛兵の間。ルイ16世の内装がありし日のままに残されていて、ピエール=ニコラ・ボヴァレー(1750-1818)が彫刻を施した羽目板にはアレキサンダー大王の物語が描かれています。また、皇帝の御膳の間には、ルイ16世時代のボワズリー(木工細工)や、ピア=ジョセフ・ソヴァージュ(1744-1818)が描いたとても美しいトロンプ・ルイユ(だまし絵)のほか、アンピール(皇帝)様式の家具があり、部屋の内装と美しい調和を見せています。



▲ナポレオン1世の寝室。
©Musées et domaine nationaux du Palais de Compiègne /M.Poirier

お次は、第二帝政時代の家具が置かれた2つのサロンへと向いましょう。ひとつはカード遊びの間で、「セリエ(舞踏会)」の折には、招待客たちが皇帝夫妻に謁見する場として使われていました。もうひとつは会談用の応接の間で、部屋には独特の形をした座り心地のよい椅子が置いてあり、打明け話の椅子、秘密を守れない椅子などと呼ばれています。そして窓の外には、ナポレオン1世が作らせた小道と森へ続く素晴らしい景色が広がります。

皇帝の寝室をご覧になれば、第一帝政期がいかに、豊かで絢爛たる時代であったかがよくお分かりいただけることと思います。豪華な部屋に展示されたコレクションはいずれも見逃せないものばかりです。壁の装飾はデュボワとルドゥーテ(1759-1840)のアトリエが、金箔を施した木製家具はヤコブ・デマルテ(1771-1841)が手がけました。椅子には深紅色の贅沢なダマスク織りが張られ、壁紙やカーテン、また赤と金の絹糸で作った寝具一式と見事に調和しています。壁紙やカーテン、寝具にはすべて帝国のシンボルである星や蜜蜂、オークの葉などがあしらわれています。


▲皇妃マリー=ルイーズの寝室。
©Musées et domaine nationaux du Palais de Compiègne /M.Poirier

お隣にある角の部屋は、調和のとれた心地よい空間。ナポレオン1世は、ここに図書室を作らせ、執務室としていました。金箔の飾りが施された家具調度は、いずれも同じひとりの高級家具師が手がけたもので統一感があり、機能性も備えています。たとえば、豪華で壮大な機械仕掛けの書斎机は、台をほんの一押しするだけで閉められます。天井にあるジロデ(1767-1824)の絵は、《アポロンとメルキュールのあいだに立つミネルヴァ》を描いたものです。そして美しい書物に隠された隠し戸を通じて、皇帝は皇妃の広間(続き部屋)へ入ることができたのでした。

第二帝政時代の家具調度が置かれた音楽の間を抜けると、皇妃マリー=ルイーズの寝室です。ここもまた非常に洗練されていて、装飾が贅沢に施されています。「四季」をテーマにした絵画はジロデの作品です。天蓋付きのベッドは白い絹と刺繍入りのモスリンで覆われていて、今も昔と変わらず、調度品の赤い織物との美しい調和を見せています。二重扉のドアを開けると、バスルーム代わりの小さなかわいらしい私室があり、ここにもまた白い絹織物がふんだんに用いられています。


▲全長43メートルの舞踏会の間。
©Musées et domaine nationaux du Palais de Compiègne /M.Poirier

大広間を通る際には、椅子の並び順にご注目なさってくださいね。当時の「宮廷の席順」のままに置かれているそうですから。ソファや肘掛け椅子は皇帝家族のためのものでした。

一続きになったサロンを抜けると、ルイ15世の狩猟の回廊があります。ここには、猟犬を使って騎馬で行う狩猟をテーマにした見事なゴブラン織りのタピスリー(1736-1746)が展示されています。J.B.ウードリー(1686-1755)のカルトン(下絵)に基づいて織られたもので、そのなかの1枚には、王が乗馬靴を身に着けているところが描かれています。

最後の部屋は、1809年にナポレオン1世の命により作られた、全長43メートルもの大きな舞踏会の間で、ナポレオン3世が催した「セリエ(舞踏会)」の際には、大いに活躍した場所でした。丸天井には帝国の栄光を称える装飾がなされ、部屋の大きさに見合った巨大なクリスタルのシャンデリアが輝いています。


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