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コンピエーニュ城美術館

▲《ヴィクトリア女王の肖像》
1842年 油彩 132 cm x 97 cm
Franz-Xaver Winterhalter Versailles, châteaux de Versailles et de Trianon
©RMN / Gérard Blot
現在コンピエーニュ城では、ナポレオン3世の生誕200年を記念し、「ナポレオン3世、ヴィクトリア女王、1855年の万国博覧会」という特別展が開催されています。

ナポレオン3世といえば、伯父のナポレオン1世とは反対に大変な英国贔屓で、何度も英国に滞在をした末に、かの地で亡くなり、埋葬されました。

最初の部屋で、わたくしたちを出迎えるのはフランツ・ザビエル・ヴィンテルハルター(1805-1873)による《ヴィクトリア女王の肖像》(1842)。この作品を見ると、ヴィクトリア女王の訪問に対してナポレオン3世がいかに心を砕いたかが、すぐに分かります。デコルテが大きく開き、レースの縁飾りがついた流行の絹のドレスを身につけ、若さの象徴である薔薇を手にした女王──。なんと魅力的な女王の姿でしょうか。ヴィクトリア女王の訪問旅行は、数多くの祝宴と贈り物の交換の場となりました。皇妃ウージェニーからヴィクトリア女王へと贈られた、宝石をちりばめたポルトブーケ(1855年頃)や、皇帝夫妻のメダイヨン(楕円形の中に描かれた肖像画)が付いた扇子の素晴らしいことといったら……。そして女王自らが注文し、身につけたという花柄プリントをモチーフにしたフランス製の布地で作られたドレスなども、一度目にしたら忘れられない逸品です。



▲《葡萄の鉢》
1855年
瑪瑙、銀(一部金箔・エナメル箔) 
35 cm x 26 cm
François-Désiré Froment-Meurice d'après Adolphe-Victor Geoffroy-Dechaume
Musée national du Château de Compiègne
©Rmn / Droits réservés

▲1853年に描かれた肖像に続いて織られたタピスリー 
1860年 241 cm x 159 cm
Manufacture impériale des Gobelins, d'après Franz Xaver Wintherhalter
dépôt au Ministère des Affaires Etrangères
©Centre national des Arts plastiques - Fonds national d'art conteporain, France / Marc Poirier

衛兵の間は完璧に改装されており、一歩足を踏み入れるや、まるで万博の会場に迷い込んだような錯覚を覚えたほど。ナポレオン3世は、自らの贅沢な嗜好と創造力によって、機械化によってより手ごろな製品を生産する英国モデルよりも、フランスが傑出していることを示したいと考えていました。そしてこの部屋には、フランスの芸術家による手仕事の素晴らしさを表した作品が飾られています。西洋菩提樹(リンデン)で作られた《皇妃ウージェニーの事務机》(1855年)は、ふんだんな彫刻と、ローズウッドのマルケトリー(寄木細工)が施されていて、いくつもの絵がはめ込まれています。《葡萄の鉢》(1854年頃)と呼ばれる作品は、ところどころに金箔を張った銀製台座の素晴らしい作品で、葡萄の房の表現などに見られるその精緻な造りは、ため息をつくほどの美しさです。


▲1855年 西洋菩提樹に彫刻,
260 cm x 196 cm x 58 cm
Alphonse Giroux et Compagnie et Eugène Labbé
Musée national du Château de Compiègne
©Rmn / Franck Rau

▲ナポレオン3世と皇妃ウージェニーを描いた扇子
フランス製, 1855, 28,5 cm
Windsor Castle, Royal Library
The Royal Library, Windsor Castle/
2008 Her Majesty Queen Elisabeth II
Feuille de papier peinte à l'aquarelle, gouache et or sur dessin à la mine de plomb,
panaches en nacres scupltés et plaques émaillées avec fleurs et putti sur fond de métal guilloché

この特別展を補うようなヴィンテルハルターの傑作《皇妃ウージェニーと侍女たち》(1855)もありますので、お見逃しなく。第二帝政美術館を抜けて、最後の部屋に飾られています。田園の中で豪華な舞踏会のドレスを身にまとった侍女たちの姿、そして気品と威厳を兼ね備えたウージェニーの輝くばかりの美しさが描かれています。

地上階に行くと、列柱廊の間にはフランス絵画とイギリス絵画が向かい合って展示されていますが、なかでも英国の田園風景を描いた美しい水彩画は秀逸といえましょう。


▲ナポレオン1世が作らせた緑のトンネル。
©A.de Montalembert

▲コンピエーニュ城と庭園
©M.Poirier

城館を出られましたら、ぜひ、ナポレオン1世が作らせた素晴らしいイギリス庭園を散策なさってみてくださいね。皇帝の命で整備された穏やかな坂道を辿って館から庭園へ──そして、庭園の小道を4kmほど進んで森へ──そこには一幅の絵画のような美しい風景が広がります。幸運にも四輪馬車で散策する機会に恵まれたわたくしたちは、日差しを避けて緑のトンネルを抜け、森へと向いました。それは、今回の旅のなんとも楽しいひとコマでした。

親愛をこめて。



▲整備された散歩道。
©A.de Montalembert

▲庭園内に伸びる小道。
©A.de Montalembert

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