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マキシム美術館 バックナンバーを読む
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▲大女優サラ・ベルナールが愛用した品々
©J. Faggiano

▲美しいペチコートの置かれた化粧室
©A. de Montalembert

5階へあがり、5階の高級娼婦のアパルトマンへ向かいました。部屋に入るやいなや、わたくしたちは、部屋を埋め尽くすほどの美術品の数々に思わず圧倒されました。とりわけ、わたくしの目をとらえたのは、花や女性の身体を思わせる波打つ曲線で装飾された色鮮やかな陶器のコレクション。アール・ヌーヴォー特有のテーマは、食器棚やワゴンなどの家具にも見られ、すべてが曲線的に作られています。現代では過剰とも見えるこうした装飾が大流行していたということは、大女優サラ・ベルナール(1844-1923)のアパルトマンの写真をご覧になればお分かりいただけることと思います。実際、高級娼婦たちは、最もモダンで最も洗練された最上の品々を顧客たちに貢がせていたのです。


▲ルイ・マジョレルがデザインした入れ子式テーブル
©A. de Montalember

▲ルイ・マジョレルの食堂
©J. Faggiano

食堂に行かれる際に、左手の素敵な化粧室をご覧になって。美しいレースのペチコートが無造作にかけてあります。食堂もまた往時のままに復元されていますが、壁の菊のモチーフからは、日本の影響を感じられますね。テーブルは何人かの招待客のために整えられています。野バラのモチーフのついたヴァロリス陶器の色彩豊かなお皿をご覧になって。なんて洗練されているのでしょう。マシエのサイン入りの装飾鉢は、ナフキンやテーブルクロスとお揃いです。テーブルの上には、お菓子を入れるための(おそらくマカロンでしょう)ユニークな箱が置かれています。蓋を開けると睡蓮の絵が現れます。お菓子が滑らないように、レースの装飾がついたとても薄いプレートで押さえるようになっています。食器棚にもまた、自然からインスピレーションを得た左右非対称の装飾が施されています。食器棚の一つには、片面にはアーモンド、もう片面にはセイヨウカリンの果実があしらわれています。窓の前に置かれた、植物模様入りの3つの入れ子式小テーブルは、マジョレルのデザインです。


▲ルイ・マジョレルがデザインしたベッドが置かれた寝室
©J. Faggiano

▲アイリスのモチーフをあしらった家具(1900年頃)
©J. Faggiano

高級娼婦の寝室にもマジョレルがデザインしたベッドとタンス、肘掛け椅子があります。彫刻家たちは、家具にアイリスや睡蓮のモチーフを彫りました。例えばベッドの脚は、1本の木材に彫刻を施したものですが、高級家具職人の高い技量がうかがえる品といえましょう。タンスの引き出しの取っ手は、草の若枝やアイリスのフォルムで、取っ手そのものが装飾の一部となっています。つまり、装飾が家具の機能性と見事に合致しているのです。壁には、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)が描いた《ルシー嬢》の肖像が掛けられています。ジゴ袖のブラウスを着たエレガントなこの女性は当時の有名な高級娼婦です。ロートレックは娼館やキャバレーといった“いかがわしい場所”に足繁く通っていたことで知られていますが、こうした場所こそが彼の芸術の源となり、また、才能の源ともなったのです。


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