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マキシム美術館 バックナンバーを読む
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▲アール・ヌーヴォー様式の書物机のある部屋
©A. de Montalembert

寝室の隣には、小さな部屋がいくつか続いています。ここでは、セム(1863-1934)作のカリカチュアに注目なさってくださいね。《高級娼婦と妻に挟まれた夫》など、当時の社交界を描き出したとても面白い作品がたくさん飾られています。流行の場所に出入りしていたセムは、もちろんマキシムの常連で、パリ中の名士をモデルにカリカチュアを描いたのです。

▲ガレ作のベッドが置かれた小さな寝室
©J. Faggiano

小さな寝室にはガレ作とされるベッドがあり、寄木細工でケシの花が描かれています。アヘンを吸うことが流行していた当時、ケシは眠りの花と考えられていました。寄木細工の地にはレモンの木、花にはバラの木、茎にはシカモアの木、小さな花にはアマランサスの木が使われています。ムーラン・ルージュで最も人気のあった踊り子、ジャンヌ・アヴリル(1868-1943)を描いたロートレックのグアッシュが、わたくしたちをフレンチカンカンの世界へと誘います。ジャンヌ・アヴリルはロートレックのお気に入りのモデルでしたが、彼のポスターのおかげで、揺るぎない名声を手にしました。ロートレックは天才的で独創的なアーティストですが、日本美術から影響を受けたと自認しており、黄、赤、青、黒といった単純な色彩を並置し、いくつかの線を引くだけで動きのある場面を描き出すことができました。


▲アール・デコ様式の食器や家具が置かれた食堂
©A. de Montalembert

▲花模様のお皿(アール・ヌーヴォー)と幾何学模様のお皿(アール・デコ)
©A. de Montalembert

美術館の見学は4階へと続きます。ここには、中庭に面した4つの小さな部屋がありますが、暖色を基調にした天井の低い空間で、華やかで豪華な上階とのコントラストに驚かされます。これらは、かつて使用人が使っていた部屋なのです。今日では、食堂を中心にさまざまな時代の美術品が飾られており、第一次世界大戦以降、美術の流行が左右対称でより単純な形態へと回帰していったことを教えてくれます。花をモチーフにしたアール・ヌーヴォー様式の皿の隣に置かれた、直線を基調とした3つの花瓶と単純で幾何学的な模様の食器類をご覧になって。これが、アール・デコ様式です。本体はまっすぐなアール・デコ様式で、装飾にアール・ヌーヴォー様式の面影を残していて、様式の変遷を物語る食器棚もあります。色とりどりのガラス細工とブロンズ像も展示されています。

在りし日の様子を見事に再現したこの高級娼婦のアパルトマンは、19世紀末から20世紀初めのパリが、いかに特別な街であったかを伝えてくれます。芸術家たちは時代にふさわしい新しい表現様式を模索し、自由で軽快な、花々で飾られた芸術をくり出したのです。類い稀なる個性、そしてアール・ヌーヴォー様式の装飾を守り続けるレストラン「マキシム」は、今なお、パリでの暮らしには欠くことのできない、伝説的な場所なのです。

友情を込めて。


▲1900年代のコレクションが飾られた美術館の内部
©A. de Montalembert

▲マキシム・ド・パリのブティック
©A. de Montalembert

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