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アノンシアード美術館バックナンバーを読む
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▲シニャック《サン=トロペ 松の木のパラソルと麻》1895年
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.


▲シニャック《サン=トロペ、雷雨》1895年
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.

▲シニャック《サン=トロペの眺め、松林に沈む太陽》1896年
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.

早世したスーラの芸術を継いだのが、ポール・シニャックです。海を愛したシニャックは、船に乗っていてサン=トロペを発見。ここに家を購入して数多の芸術家たちを招きました。美術館に展示されている彼の作品をご覧いただければお分かりになるように、この小さな港はシニャックの着想源となりました。《サン=トロペ、カヌビエのカサマツ》(1897年)では、調和のとれた静かな心地よい風景が、黄色と橙色がかった小さなタッチで表した夕暮れの柔らかい光の中に描かれています。《サン=トロペの眺め、松林に沈む太陽》(1896年)では、赤や橙色、紫といった暖色のトーンを使って夏の暑さの中に沈みゆく太陽を表現しつつ、村の屋根や鐘楼、サン=トロペの入り江や丘がとらえられています。こうした素晴らしい眺めは、今も在りし日のままに残されています。それとは反対に《サン=トロペ、雷雨》(1895年)では、猛り狂った自然の様が表現されています。ここではシニャックはあらゆる色調を用いています。空と海には青の階調、日差しに照らされた村は明るい黄色。小さなヨットだけが嵐に持ちこたえ、作品に生命を与えています。またピカビア(1878-1953)作の点描画法による風景画にも触れておきましょう。《サン=トロペ、城塞からの眺め》(1909年)は、紫、緑、桃色、橙色、青など、コントラストの強い小さなタッチで描かれています。

次の展示室に移る前に、マイヨールの力強く美しい彫刻をご覧ください。優雅な肢体の《髪をとく裸婦立像》(1930年)は、丸い窓の前に置かれることで、その素晴らしさが引き立てられているようです。


▲ヴュイヤール《ランプの下の二人の女性》1892年
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.


▲ヴュイヤール《キッチン、トゥルフォー通り》1900年頃
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.

▲ヴュイヤール《アネットのスープ》1900-1901年
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix ,Ville de Saint-Tropez.

ふたつ目の展示室では、ボナール、ヴュイヤール(1868-1940)、ドニ(1870-1943)などナビ派の画家たちが紹介されています。ナビ派の画家たちは、デッサンと色彩の単純化によって従来の絵画を解き放とうと考えていました。光を研究しながら、日本の浮世絵に影響を受け、色彩と線の自立を主張しました。また、日常生活の親密な情景を好んで描きました。その最たる例が、エドゥアール・ヴュイヤールの絵画でしょう。《ランプの下の二人の女性》(1892年)では、物が人物と同じ重要性を持っています。黒い平塗りで暗示されている人物はそれとは分からないほどです。画家がここで表現しているのは、自らが愛した平和で静かな雰囲気です。ヴュイヤールが親密な情景を好んで描いた背景には、彼が生涯独り身で母親と暮らしており、彼女が開いた小さな裁縫店の片隅で絵を描き始めたことがあるかもしれません。女性が幼い娘に食事を食べさせている場面を描いた《アネットのスープ》(1900-1901年)は、ごくありふれた日常の情景。色調はやさしく、青とグレーの色合いに和らげられています。日本の影響が壁紙と屏風に現れています。《ふたつの椅子のある室内》(1901年)では、食堂にいる女性が描かれています。黄色、橙色、緑を基調にぼやかされた色彩は、薄暗い室内の詩的な雰囲気を表しています。


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