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アノンシアード美術館バックナンバーを読む
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▲ヴァロットン《書斎のミジア》1897年頃
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.

ヴュイヤールの親友、ピエール・ボナールの《暖炉の前の裸婦》(1919年)もまた、親密な情景を描いた一枚です。黄色、紫、桃色による柔らかい色調によって慎み深さが表されています。ボナールは妻のマルタをモデルに数多くの裸婦画を描きました。
フェリックス・ヴァロットン(1864-1925)は、《書斎のミジア》(1897年頃)で、仕事机に身を屈める文学者の女性を描いています。この作品はワンピースの赤、ソファーの黒、テーブルの青といった平塗りの色彩によって描かれています。



▲美術館の正門
©A. de Montalembert

三つ目の展示室で紹介されているのは、とても重要な絵画の潮流「フォーヴィスム」。1905年から1907年の非常に重要な作品が所蔵されています。フォーヴィスムとは、形態を単純化し、それぞれの絵画において自立したやり方で原色を秩序立てて用いることで世界や自然をとらえるという新しいスタイルでした。フォーヴィスムの登場によって、芸術は芸術家が内面で感じたものの表れとなったのです。このミュゼのコレクションの中で、最も有名な作品はマティスの《ジプシー女》(1905-1906年)ですが、これはフォーヴィスムの最も重要な作品のひとつでもあります。マティスはこの裸婦像で、青、赤、緑の色彩を調和させています。コントラストの強い色調は、もはや女性の身体の色とは何の関係もありません。同じフォーヴの画家、アンドレ・ドラン(1880-1954)は、《水に映る太陽の効果、ロンドン》(1906年)において、さまざまな色調の緑、青、橙色といった豊かな色彩を用いており、ここにおいて、絵画は現実から離れて抽象画に近づいています。強く硬質な色彩を用いたブラック(1882-1963)の《レスタックの風景》(1906年)もまたフォーヴィスムの作品です。そしてヴァン・ドンゲン(1877-1968)のふたつの作品、《ジプシー女》(1910-1911年頃)と《広場にて、手すりにもたれる女》(1910-1911年頃)は、美術館が所蔵するヴァン・ドンゲンの作品の中でも最も有名なものです。彼は、貞操観念の薄い女性を主題に、激しい色彩と独創的な画面構成を用いて描く挑発的な画家です。
この大展示室の一番奥では、華奢な身体で両腕を広げ、手のひらを上に向けたマイヨールの《ニンフ》(1930年)が私たちを迎えてくれます。


▲サン=トロペの港入り口
©A. de Montalembert


▲サン=トロペのグリモー港
©A. de Montalembert

この最後の展示室には、マティスのふたつの魅力的な作品が展示されています。《ニースの室内、マティス嬢とダリカレール》(1920年)では、ふたりの若い女性が会話をする、落ち着いた楽しげな雰囲気が表現されています。《窓辺の女性》(1920年)では、室内と屋外がひとつに溶け合っています。ここには、非凡で孤独な画家ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の作品もあります。ルオーは何らかの運動の一員となることを一貫して拒んだ画家でした。宗教的な主題に関心を持っており、暗く温かみのあるトーンと単純な線で描いた《聖書の風景》(1935年)は、ルオーのほかの作品と同様、精神的なあるいは観念的な思索へと誘います。

プロヴァンスとコート・ダジュールには、マティスやルノワール、ジャコメッティなどの芸術家たちに捧げられた素晴らしいミュゼがたくさんあります。そして、その多くは、いかにも南仏らしい町や村にあるのです。アノンシアード美術館はコレクションのクオリティとまとまりという点においてとても優れているばかりか、サン=トロペという場所もまた特別な魅力になっています。コート・ダジュールに行く機会があればもちろんのこと、そうでなくても、ぜひとも訪れていただきたい特別な場所のひとつです。

友情を込めて。


▲ヨットが停泊するグリモー港
©A. de Montalembert

▲アノンシアード美術館からの眺め
©A. de Montalembert

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