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マラルメ美術館 Musée Mallarméマダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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▲季節の花が咲くマラルメ美術館の庭
©Anne de Montalembert

▲緑に囲まれたマラルメ美術館
©Anne de Montalembert

その田舎の家を改装したのが、県立マラルメ美術館です。一歩足を踏み入れれば、マラルメが築いた温かい家庭、心やさしく寛容であった彼の人となりが感じられるかのようです。当時の田舎家に典型的な瓦葺きの屋根で、天井にはむき出しになった梁が見え、床には硬いレンガが張られています。


階段を上がると、そこは、マラルメが実際に暮らした部屋を再現した空間。詩人が愛用した調度品が置かれ、図書室などもあります。階段の踊り場で、彼の愛した家を訪れる客人たちを迎えてくれるのは、フェリックス・ナダールが撮影したマラルメのポートレートです。また、ゴーギャン(1848-1903)がマラルメに贈ったという自作の美しい木像《牧神の午後》も飾られており、ふたりの親交を今に伝えています。

見学コースの最初の部屋は、詩人の図書室であった小さな部屋です。マラルメは友情のしるしとして、女性たちに扇子を贈ることを好んだといわれていますが、ここでは、小さなカーテンを開けて、彼の娘ジュヌヴィエーヴの扇子をぜひ、ご覧になってみてください。マラルメが愛娘に捧げた美しい詩が書かれています。


▲マラルメの妻マリーと娘ジュヌヴィエーヴの部屋
Musée départemental Stéphane Mallarmé © Yvan Bourhis/DAPMD CG77

その隣は、マラルメの妻マリーと娘ジュヌヴィエーヴの部屋です。緑の色調で装飾が整えられたこの部屋はとても居心地のよい空間。寝台の上には、エドガー・ドガ(1834-1917)の手によるすばらしい写真が掛けられ、壁には、ジュリー・マネの従姉妹、ポール・ゴビヤール(1869-1946)が描いた愛らしい花の絵の連作が飾られています。左側の壁にはベルト・モリゾが描いた鉛筆画《ジュリー・マネとポール・ゴビヤールの肖像》がありますが、従姉妹同士の少女たちの仲睦まじい様子が伝わってくるようです。窓の外には樹々や花々の美しい牧草地が広がっています。きっと、マラルメの妻と娘もこの景色を愛でたのでしょうね。


▲赤の内装が印象的な食堂
Musée départemental Stéphane Mallarmé © Yvan Bourhis/DAPMD CG77

赤で統一された食堂の内装は、マラルメがとても大切にしていた18世紀のザクセン製の掛時計に合わせて考えられています。この掛時計は1864年に発表されたマラルメの散文詩『冬の戦慄』にも登場するもの。この他の家具はとても簡素で、食器棚とルイ16世様式のテーブルがあります。このテーブルはパリから持ち込んだもので、例の毎週火曜日の文学の夕べに集まったマラルメの友人たちが囲んだテーブルにちがいありません。中国磁器の煙草入れが置かれていますが、これは嗅ぎタバコ用です。壁に掛けられたマラルメと娘の肖像画は、彼らの大切な友人だったアメリカ人画家ホイッスラーの手によるものです。


▲漆の戸棚が置かれた「日本の小部屋」
Musée départemental Stéphane Mallarmé © Yvan Bourhis/DAPMD CG77

お次は、もともとマラルメの書斎であった「日本の小部屋」と呼ばれる小さな部屋へと参りましょう。後にマラルメが自分の寝室を持つようになった際に、この小部屋は母娘の居間になります。部屋名の由来は、19世紀末に流行した日本趣味でまとめられた内装から。19世紀末のすばらしい日本製の漆の戸棚も置かれています。マラルメは、たくさんの引き出しのあるこの戸棚に、長年にわたって書き溜めた覚え書きを収め、執筆の際に役立てていたことでしょう。マラルメの没後、彼の遺言によって、それらの覚え書きがすべて妻と娘の手によって燃やされてしまったのはとても残念なことです。


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