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ジャン・コクトーの家 Maison Jean Cocteau, Jean Cocteauマダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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▲廃墟を改修して造られたブティック
©Anne de Montalembert

袋小路に位置するこのユニークな邸宅は、かつての領主が暮らしたラボンド城(13世紀/15世紀と16世紀に改修)の一部。正面からはふたつの小塔が見えます。コクトーが購入した土地には、庭と森、蔦の絡んだ塔のある堀に囲まれたロマン派的廃墟があります。小さな館は、現在は修復され、可愛らしいブティックに改装されていて、一般の方々も入ることができます。


▲コクトーの家。裏手のファサード
©Anne de Montalembert

小さな中庭を通って、家に入りましょう。台所を通って中に入るようになっており、赤と黄色のタイルも当時のままに残されています。右側の壁に書かれたコクトーの年譜をご覧になれば、彼の人生がどれほど並外れたものであったかがお分かりいただけることでしょう。映画『詩人の血』には、「鏡を通り抜ける」有名なシーンがありますが、それは自らの真実の姿を探し求めていたコクトー自身の姿であったと、わたくしには思えてなりません。そこに映写された『鳥刺しジャンの神秘』(1923年)シリーズのいくつかの自画像も同様です。


▲コクトーが装飾を手がけたサン=ブレーズ=デ=サンプル礼拝堂
©Anne de Montalembert

隣の小さな部屋には、コクトーの卓越した技術を示す数々の例が展示されています。展示ケースに飾られたコクトーのデッサンの素早い線といったら!《演説の下書きの中の自画像》(1915-1920年頃)のデッサンのように、文章を書いている途中にアイデアが浮かぶこともあったようです。コクトーの顔は、上から下へ、下から上へ書かれた文章の紫の細い文字に囲まれています。ある壁には、水生怪物のような『ポトマック』のデッサン(1913-1914年)のモンタージュが作られていました。それから小さな玄関には、ここミリーの地で友人たちに囲まれるコクトーの写真が展示してあります。リンドウやキンポウゲなどの花を描いたサン=ブレーズ=デ=サンプル礼拝堂装飾のための準備段階のデッサンもご覧ください。


▲温かな雰囲気のサロン
Salon de Jean Cocteau ©Photo Patrick Boucher/ Maison Jean Cocteau à Milly-la-Forêt.

コクトー在りし日のままに再現されたサロンは、今もとても温かい雰囲気。庭に面したこの心地よい部屋は、コクトー自身が装飾を手がけています。また、サロンにはさまざまなオブジェが飾られていますが、とりわけ多いのが動物を象ったもの。窓辺にある金属と銅のアオサギ(20世紀)、暖炉の両脇にある素晴らしい2頭の雌鹿、コブウシの角、小さなテーブルに置かれた剥製の牡羊の頭(19世紀)・・・。真鍮と銅でできたふたつの美しいヤシの木に囲まれた、ソファの上にあるクリスチャン・ベラール(1902-1949)の大きな絵画《カードゲームをするオイディプスとスフィンクス》をご覧になってみてください。コクトーの希望で、壁の布は裏表に取り付けられています。赤いカーテンと、金色の大きな模様がついた存在感ある絨毯のせいでしょうか、部屋全体は陽気な雰囲気に満ちています。


▲ジャン・コクトーの書斎
©Photo Patrick Boucher/ Maison Jean Cocteau à Milly-la-Forêt.

2階の書斎とその隣の寝室も、当時のまま保存され、よく考えられた装飾で埋め尽くされています。小振りな書斎には数多くのオブジェと家具が置かれています。暖炉の上には、陶器、胸像、ブロンズの浮き彫りも見えます。小さなテーブルは本と置物で一杯で、バイロンの胸像、アヘンのパイプ、絵具のチューブなども置かれています。黒板には数々の写真が貼ってあり、夭折した恋人ラディゲのものもあります。しかし、最も独創的なのは、背もたれと脚がコブウシの角で出来ている小さな低い肘掛け椅子でしょう。ヒョウ柄の布が壁とシェードとソファに使われています。

寝室では、バラ色の布でキルティングされた天蓋のついた素晴らしいベッドが部屋の大きな場所を占めています。暖炉に置かれた若い男の胸像は、母方の祖父から受け継いだものです。壁のフレスコ画はおそらくジャン・マレーが描いたものでしょう。


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