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バルザックの家 La Maison de Balzacマダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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▲アレクサンドロ・プッティナティ《バルザック》大理石 1837年
©Maison de Balzac / Roger Viollet

▲バルザック愛用のリモージュ焼きのコーヒーポット
©Maison de Balzac / Roger Viollet

白い陶器の素敵なフライパンのある食堂は、現在、原稿の展示室となっています。ここでは、例えば、『老嬢』(1836年)の同じ頁を20回も訂正するといった、バルザックの飽くなき仕事ぶりを伝えています。削除線や数多くの訂正が入った原稿や校正刷りは解読困難なほど。仕事に厳しいバルザックは、編集者とうまくいかなかったと伝えられています。H.B.のイニシャルと王冠があしらわれたコーヒーポットは、作家が昼夜問わず執筆を続けるために、たくさんのコーヒーを飲んだことを教えてくれます。
図書室にはブロンズ製のバルザックの小さな手も展示されています。アレクサンドロ・プッティナティ(1801-1872)の大理石像《オノレ・ド・バルザック》(1837年)は、禁欲的な生活を営んだ作家が、仕事着である修道士のローブを来た姿で表されています。

かつての家政婦の部屋には、『人間喜劇』の登場人物、およそ2,500人の系図が展示されています。各登場人物は家族関係や婚姻外の関係で結ばれていますが、それぞれ、バルザックを取り巻いていた実在の人々がモデルになっています。また、26もの小説に登場する野心的な田舎者ラスティニャックのように、幾つもの小説に描かれる人物もいるのです。『人間喜劇』は全91編の作品からなりますが、初版からバルザック監修のもと制作された系図が収録されていました。展示されているのはコンラッド出版の系図で、もともと予定されていた137の小説のうち85作品が含まれています。シャルル・ウアール(1874-1965)が板にデッサンしたものを、ピエール・グスマン(1862-1942)が銅版画にしたもので、1910年から1940年の間に制作されました。木では脆いため、印刷に用いるために銅版に起こしたのです。

バルザックは19世紀を代表する文豪のひとりです。中でも『人間喜劇』は、比類ない普遍的な作品です。ひとつの小説から別の小説へ同じ人物が繰り返し登場することが、この作品の最も革新的で最も注目すべき点といえますが、さらに、そこに描かれた諸問題は今なお現代性を持って語ることのできるものばかりです。それゆえ、バルザックの作品は今日でも広く読者に愛され続けているのでしょう。


▲企画展「パリのカーニバル」の出品作
©Maison de Balzac / Roger Viollet

▲企画展「パリのカーニバル」に展示されたガヴァルニの『征服』
©Maison de Balzac / Roger Viollet

バルザックの家では、2012年11月15日から2013年2月17日まで、「パリのカーニバル」と題したとてもおもしろい展覧会が開催されています。1830年から1850年という娯楽に満ちた動乱の時代を、デッサン、版画、ユーモアたっぷりの引用などで紹介します。あらゆる階層の人(労働者、グリゼット、上流社会の婦人、貴族など)が入り乱れてダンスホールに通い、中にはガヴァルニ(1804-1866)が『征服』のなかで描いたように奇抜な変装をする人もいたようです。ぜひ、ご覧になってみてください。

友情を込めて。


▲レヌアール通りから見たバルザックの家
©Anne de Montalembert

▲庭の一角にあるカルヴェラーニによるバルザックの胸像
©Anne de Montalembert

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