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モネの作品を訪ねるフランスの旅 オルセー美術館とマルモッタン美術館が選ぶ モネを知るための名作
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モネ《エプト川のポプラ並木、風の日》1891年
©Photo RMN/H.Lewandowski/digital file by DNPAC

 <積みわら>の連作は、1891年5月にデュラン=リュエル画廊で展示され、めざましい成功を収めた。批評にもたくさん取り上げられたほか、数多の作品が愛好家や美術商によって購入された。おそらくそうしたことに励まされて、モネはいっそう野心的な主題を連作で展開するにいたった。またもジヴェルニーの自邸の周辺で、彼は上流に2キロとさかのぼらない場所で新しい主題を見出すことになる。モネが選び取ったのはエプト川を縁どるポプラ並木だった。彼はアトリエ舟からそれらを捉え、遠近法に従って幾何学的な姿を空に刻みながらそびえたつポプラ並木のシルエットが生み出す遠近感を巧みに用いている。連作のうち夏に描かれた初期の絵では、見るものの眼の前にたくさんの木々が並べられているが、少し後の絵になると、前景の木の幹が少なくなる一方、奥のほうに別の木々が姿を現す。
 本作品では、モネはポプラを描写することに専念している。風で四方になびく最前景の草だけ残して川は姿を消し、木々のこずえは画面の上端で切れている。柔らかい緑色の葉をつけた若木が描き出す対角線があるにもかかわらず、あらゆる要素が一つの絵画平面に集められることによって遠近感は失われつつある。こうした処理は古典的なイリュージョニズム(平面上に空間の錯覚を作り出すこと)からかけ離れているので、もはやここで使われている色彩の階調においては、対象に忠実であることがかならずしも目指されてはいない。そのため、ポプラの間には青やモーヴといった思いがけない色調が入りこんでいる。1892年デュラン=リュエル画廊で展示されたポプラの連作は、モネに再び喝采をもたらしたのである。



2007年4月7日から6月2日まで新東京国立美術館で開催中の「大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産」のカタログより抜粋。
( オルセー美術館並びに、同展主催者の承諾のもと掲載。)
同カタログは、MMFブティックにてお求めいただけます。
 
   
   
   
   
   
   
 

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