南仏コート・ダジュールのミュゼレポート ギメ東洋美術館
  世界の宗教博物館を作りたいと望んだエミール・ギメのコレクションを元に誕生したこの美術館は、彫刻、絵画、装飾品など現在約4万5,000点もの収蔵作品を誇っています。今月はヨーロッパの中でも、コレクションが網羅しているエリア、文化、歴史ともに、最もバラエティにあふれた東洋美術の館をご紹介します。
 
東洋の美に魅せられた エミール・ギメ アジアに広がる仏教美術と 中国美術の魅力 日本の美にパリで出会う パンテオン・ブディック
土偶から20世紀初頭までの日本美術コレクション
▲日本の天平時代から江戸時代までの仏像彫刻の展示室。
 ギメは1876年に日本を訪れています。この美術館では縄文時代の土偶、弥生時代の埴輪から6世紀に伝来した仏教美術の系譜、漆細工、陶器、鎧や刀などの伝統工芸品まで見ることができます。漆細工のコレクションはそれほど多くありませんが、これらはマリー=アントワネット(Marie-Antoinette)が母、マリア・テレジア(Maria Theresia)から譲り受けてフランスに持ち込んだものです。
富岡鉄斎(Tessai Tomioka)のユニークな図柄の掛軸、浮世絵も多くコレクションされています。朝鮮と中国のセクションが隣接しているため、これらの文化が共有するもの、またその違いを比較してみるのも面白いでしょう。
 
開館当時の面影を残す図書室
 ギメ美術館は展示室を開放的にし、自然光を多く取り入れるなどの工夫を凝らして近年改修されましたが、塔の内部にある円形の図書室だけは開館時のオリジナリティを保っています。10万冊の書籍と800冊の画集、1,500種類の定期刊行物を収蔵しています。美術館を作るとともに、研究者が自由に資料を閲覧する場を作ることをギメは使命と考えていました。またここは1905年にフランスで初めて日本の真宗を招いて仏教のセレモニーが行われた場所でもあります。その時はマタ・ハリ(Mata Hari)がブラマン様式のダンスを披露しました。漆職人の松田権六(Gonroku Matsuda)が作った椅子が置かれた1935年の写真も残っています。
 現在ここでは光の刺激に弱い版画や絵画の展示が行われています。
▲吹き抜けで2フロアある図書館。
     
日本と中国の宗教美術を集めたパンテオン・ブディック
▲パンテオン・ブディック外観。
 パンテオン・ブディックは「仏教諸尊ギャラリー」と訳されます。ギメ美術館の別館で同じ通りにあります。ここはギメが1876年に日本と中国を訪れて持ち帰った美術館初期のコレクションが収められています。コレクションの大部分は日本から到来したもので、如来、菩薩、明王などの仏教用語の説明、またそのカテゴリー別に分かれた仏像展示など、美しい尊像を拝むだけでなく、仏教入門のための施設としての役割も兼ね備えています。
1878年のパリ万博で披露された東寺の立体曼荼羅の複製、失われたとされていた法隆寺の勢至菩薩など、見どころはたくさんあります。また庭には日本庭園と茶室が設えられています。きれいに手入れされた庭を見ているとここがフランスであることを忘れてしまうかのようです。
▲失われていたとされていた法隆寺の≪勢至菩薩≫。12世紀・日本
     
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東洋の美に魅せられた エミール・ギメ アジアに広がる仏教美術と 中国美術の魅力 日本の美にパリで出会う パンテオン・ブディック
   
田中久美子(Kumiko TANAKA/文)/Andreas Licht(写真)
ギメ東洋美術館
所在地
 
6, place d'Iéna 75016 Paris
Tel
 
+33(0)1 56 52 53 00
開館時間
 
10:00-18:00
休館日
 
火曜日
入館料
 
常設展 一般:6.5ユーロ
割引:4.5ユーロ
(但し、第1日曜日は入館無料、他の日曜日は割引料金)
特別展 一般:7ユーロ 
割引:5ユーロ
(但し、毎日曜日は割引料金)
特別展と常設展を含めた見学
一般:8.5ユーロ
割引:6ユーロ
※18歳未満、身障者、ジャーナリストは無料
アクセス
 
地下鉄イエナ(léna)駅、トロカデロ( Trocadéro)駅、ボワシエール(Boissière)駅下車。
MMFで出会えるギメ東洋美術館
MMFブティックでは、ギメ東洋美術館の作品からモチーフを得た個性的なアクセサリーをお楽しみいただけます。
MMFインフォメーション・センターでは、公式ガイドブックから過去に開催された展覧会カタログなど、ギメ東洋美術館に関する書籍を閲覧いただけます。
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