MMM｜アンティーブ、ピカソ美術館


	エッフェル塔の景観が素晴らしいトロカデロ広場。その広場に両翼を広げるシャイヨー宮の中にあったフランス文化財博物館が、昨年9月、展示面積を増やし、世界でも類をみないモニュメントの総合博物館として新しくお目見えしました。今年初めての特集は、生まれ変わって間もない、この建築・文化財博物館をご紹介します。

▲シャイヨー宮の両翼にある建築・文化財博物館外観。

　1937年のパリ万国博覧会の時に、現在の姿となったシャイヨー宮には、3つの博物館が入っています。エッフェル塔に向かって右側には海洋博物館と人類博物館、左側にはフランス文化財博物館と映画博物館が入っていましたが、映画博物館とシネマテークがベルシーに移転したことにより、その一翼すべてを建築・文化財博物館とすることになりました。
　そして展示面積の拡張、新技術の導入、建築部門の新設などが行われ、2007年9月、常設展示面積8,000m²、企画展示室2,300m²という大規模な美術館が誕生することになったのです。

　前身のフランス文化財博物館は、修復家であり建築家でもあったヴィオレ・ル・デュック（Viollet-le-Duc）の提唱により、1882年に開館した歴史あるもので、建築や装飾文化の啓蒙を目的として設立されました。愛好者や研究者のために、フランス各地にある歴史的建造物の素晴らしい彫刻部分の実物大複製を展示していました。この複製は鋳型による造形でムラージュと呼ばれ、フランスには16世紀にすでにその技術がありました。ルーヴル美術館にも1794年にムラージュ工房が作られています。

　新たに生まれ変わった建築・文化財博物館の1階部分は、フランス文化財会館のムラージュ・コレクションが基礎となっています。フランス各地に散らばる12世紀から18世紀の60の建築物、350点の彫刻作品などがポンペイの赤をイメージした壁に並んでいます。世界遺産にもなっているヴェズレー、オータン、モワサックなどのロマネスクのカテドラルのタンパン（おもにロマネスクの教会の扉の上、アーチ部分に施された彫刻）は圧巻のひと言。

▲開放感のあるムラージュの展示室。

▲手前に見えるのがモワサックのサン・ピエール大修道院のタンパン、その向こうがヴェズレーのマドレーヌ教会のタンパン。いずれも12世紀の傑作。

　展示室の天井が高いため、ダイナミックさやボリュームはそのまま感じることができ、その一方で自然光に近い照明によって、細部までよく見ることができるように考えられています。
　ランスのカテドラルにある《微笑の天使》は第一次世界大戦で壊されてしまいましたが、大戦前に作られていた複製が復元に大きな役割を果たしました。屋外の建築や彫刻は風雨にさらされて傷んでしまう宿命ですが、複製は実物の修復のための資料にもなるのです。19世紀、すでに古い建築の価値を認め、保存に取りかかったフランスの先見性に驚かされます。
　パリから遠いためなかなか見に行けないものや、実際には内部が暗すぎたり、上部などにあって詳細がわかりにくかったりする柱頭なども、ここでは目前に見ることができます。またカテドラルの装飾はかつて着色されていたものもあり、コンピュータによってオリジナルの色を再現した画像をともに見ることができるようになりました。

　建築の模型なども一緒に展示してあり、オペラ座のコンペに提出したムリーのマケット（立体模型）などは、落選して採用にはならなかったものの、19世紀の当時の雰囲気を色濃く表していて楽しいものです。

▲ランスのカテドラルにあった《微笑の天使》の複製。

▲アミアンのノートルダム聖堂正面にあるボー・デューの複製像とオリジナルの色を再現した画像をともに見ることができる。

▲パリ、オペラ座のコンペのためにクロード・テオフィル・ムリーが作ったマケット。

田中久美子（Kumiko TANAKA/写真・文）

▲	建築・文化財博物館が建つトロカデロ広場からの絶景。

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所在地

1, place du Trocadéro et du 11 novembre 75116 Paris

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Tel

＋33（0）1 58 51 52 00

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URL

http://www.citechaillot.fr/

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開館時間

11：00-19：00
※木曜は21:00まで開館

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休館日

火曜日、1/1、5/1

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入館料


●	常設展示一般：8ユーロ割引料金：5ユーロ ※18歳以下は無料 ※毎月第一日曜日は無料
●	常設展示と企画展一般：10ユーロ割引料金：7ユーロ

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アクセス

地下鉄トロカデロ（Trocadéro）駅、イエナ(Iéna)駅下車

MMFインフォメーション・センターでは、建築・文化財博物館発行の書籍をはじめ、この博物館に関する記事が掲載された雑誌などを閲覧いただけます。

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