リール、カレー、ダンケルク グラーヴェリン、ブルブール 北フランスのミュゼレポート2009
© Office de Tourisme Gravelines - les Rives de l'Aa / M.Coeugnet
ノール=パ・ドゥ・カレー地方の 3大美術館で開催中! アンソニー・カロ大回顧展 多くの観光名所を擁するオパール海岸風光明媚な海岸 の町グラーヴェリンブルブールと アンソニー・カロの教会
修道院などの史跡が残るブルブール アンソニー・カロの手で生まれ変わった教会  グラーヴェリンから内陸へ約7km、ブルブール(Bourbourg)は人口約7000人の小さな町です。フランドル語のBrockburg(沼地の教会の意)に由来する町の名前が物語るように、ここはもともと沼地で、開拓が始まったのは9世紀頃とされています。その後、フランドル伯ロバート2世・ド・エルサレム(comte de Flandre Robert II de Jerusalem)が十字軍遠征の帰路に、サン・オマールの聖ベルタン(Saint Bertin)修道士にブルブールの土地を譲ったことから、現在も残る聖ジャン・バチスト教会やダム・ノーブル修道院など、多くの修道院が建造されるようになりました。
▲ブルブール町役所広場より教会を眺める
© Michiko HYUGA
▲聖ジャン・バチスト教会外観正面
© Office de Tourisme Gravelines - les Rives de l'Aa / M.Coeugnet

▲アンソニー・カロの手がけた聖ジャン・バチスト教会内陣
©Marc Domage
 2008年10月11日、この町にイギリス・フランス・ベルギー・オランダから約300名の招待客が訪れました。お目当ては聖ジャン・バチスト教会内陣修復の落成式。フランス文化庁の注文で、現代彫刻の巨匠アンソニー・カロ(Anthony Caro)が初めて教会の修復のディレクションを手がけたとあって、国内外の注目を集めました。
 聖ジャン・バチスト教会は11世紀にローマ様式で建てられ、13世紀には、イル・ド・フランス地域の教会の影響を受け内陣がゴシック様式に作り直されました。その他、15世紀の翼廊や18世紀のパイプオルガンなどを備えた教会堂は、1920年、歴史建造物に指定されます。しかし、第二次世界大戦の戦火を被り、教会は一部崩壊。その後、補強工事がされただけで、半世紀ものあいだそのままに放置されていました。そして、1997年、文化庁は教会の修復を決定し、アンソニー・カロを迎えることになったのです。

▲落成式当日、記者団の質問に答えるアンソニー・カロ
©Michiko HYUGA
カロは、建築家ピエール・ベルナール(Pierre Bernard)の協力を得て、光溢れる内陣と洗礼堂、礼拝堂を作り上げ、自らの彫刻作品を配しました。「すべての人に解放された瞑想と希望、安らぎの場所になることを思いながら内陣を手がけました」とカロ自らが語ったように、創建から1000年の時を経て生まれ変わった教会は、宗教美術と建築、現代彫刻との共存を証明するとともに、かけがえのない祈りの場として、地元の人々によりいっそう愛され続けてゆくことでしょう。
▲内陣入り口を入って左にカロ作「朝の塔」、右に彫刻「神への感謝(Alleluia)」
©Michiko HYUGA
▲翼廊には、子供たちの作品が飾られている
©Michiko HYUGA

アンソニー・カロ:Anthony Caro
現代彫刻界を代表するアーティスト。1924年出生イギリス人。1950年初頭には、ヘンリー・ムアの最後のアシスタントとなる。現代のイギリス・アートを代表する、リチャード・ロング(Richard Long)、ビル・ウッドロウ(Bill Woodrow)、バリー・フラナゲン(Barry Flanagan)ベールとジョージ(Gilbert & George)はカロの教え子。ニューヨークのMOMA、東京国立近代美術館、ロンドンのテート・モダンやギャラリーがコレクションしている。
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取材:日向倫子(Michiko HYUGA)

多くの観光名所を擁するオパール海岸ロダンの彫刻と レースの街カレーフランス第3の 港湾都市ダンケルク
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ブルブール観光情報
  • Mairie de Bourbourg(ブルブール観光案内所)
    http://www.ville-bourbourg.com/
  • ブルブールの伝説
    伝説の人物ゲデオン(Gédéon) :
    今回、アンソニー・カロの手で生まれ変わった聖・ジャン・バチスト教会ですが、ブルブールではこの教会の鐘にまつわる古い伝説が残されています。それが、ゲデオンの伝説です。
    14世紀フランドル伯内の戦争中、聖ジャン・バテスト教会の鐘を鳴らす仕事をしていたゲデオンは、グラーヴェリン付近の安全な場所まで運び隠し、イギリス軍より保護して、ブルブールの英雄となったのです。鐘は時代とともに新しく作り直され、その鐘の音とともにゲデオンの伝説を今に伝えています。毎年聖ジャン祭では、村人たちが大きなゲデオンの人形に随行してお祝いする様子が見られます。2009年の聖ジャン祭 は6月20日~21日。第82回ゲデオン随行は6月21日。

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