▲フリゲート艦の艦長の制服。
1913年 フランス海軍
© MNM - Sébastien Dondain
フランス海軍の正式なユニフォームの歴史は、18世紀の海軍将校の軍服に始まります。ルイ14世(Louis XIV)の治世下(1643-1715)において、海軍将校の服装には既に王室指定のさまざまな規則が存在していましたが、正式な義務としての「制服」が制定されるのは1764年のことでした。1786年、アンシャン・レジーム(旧体制)下において1年間にわたる遠征のために将校以外の船員にも海軍から服の支給がなされます。しかしそれらの支給は一部の水兵のみに限定されていたため、多くの下級の船員は依然自身の古着を用意しながら船に乗り込んでいました。その後フランス海軍は19世紀の前半を通して、水兵の服装の統一化を目指します。そして1858年の第二帝政期下に、デッキパンツにボーダーニット、青襟の白シャツに短い丈の外套、ポンポンの付いた帽子などが、水兵のユニフォームとして正式に定められました。 1913年 フランス海軍
© MNM - Sébastien Dondain
▲水兵の夏の制服。
2008年 フランス海軍
© MNM - Sébastien Dondain
企画展最初の展示室では、19世紀から現在までのフランス海軍のユニフォームが時代順に展示され、その変遷が紹介されています。素材や細部のデザインには変化があるものの、セーラーカラーにボーダー、ポンポン帽などの特徴的な部分は初期のスタイルがそのまま残されているのがわかります。これらのユニフォームが150年の時を経ても劇的な変化を見せないでいるのは、その着心地のよさと機能性が理由といわれています。それに対して将校の服のデザインは、時代とともに刺しゅうなどのデザインが簡素化されていくのが印象的です。 2008年 フランス海軍
© MNM - Sébastien Dondain
▲Alfred Grévinによる水兵風の舞台衣装(またはパーティーファッション?)の構想。
第二帝政期
© MNM - Arnaud Fux
1830年代から1840年代にかけて、水兵のスタイルは市民社会の中でも見受けられるようになります。小説や版画などの影響で、水兵のイメージが当時美化されていたこともあり、水兵の格好をファッションとして真似る人々がパリに現れ始めます。当時のパリでは安価な入場料で参加できる仮装パーティーが大きな成功を収めており、女性の参加者のあいだでは男性の格好をするのがちょっとしたブームとなっていました。軍人や海賊、パリの少年とともに、水兵は女性に人気の男装ファッションのひとつでした。水兵スタイルのファッションを身に付けた女性の姿は当時のモード雑誌でも多く取り上げられています。 第二帝政期
© MNM - Arnaud Fux
フランスでポピュラーな存在となりつつあったこの水兵のスタイルが、日常着として使用されるようなったのは、イギリスのヴィクトリア女王(Victoria)が1846年に子どもたちにセーラー服を着せたことが大きな発端でした。メディアで取り上げられたこのファッションは、宗教儀式の際の子どもの正装としてフランスでも徐々に上流階級の人々の間に浸透していきます。1880年代には子どもの「制服」としてほぼ認識されるようになり、専門店では素材、色、装飾と、さまざまなヴァリエーションを持った「マリン・スタイル」の子ども服が売られるようになります。
▲セーラー服の少女の写真。 |
▲様々なヴァリエーションの子ども用のセーラー服。 |
文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
- 所在地
Palais de Chaillot 17, place du Trocadéro 75116 Paris - Tel
+33(0)1 53 65 69 69 - Fax
+33(0)1 53 65 69 65 - URL
http://www.musee-marine.fr - 開館時間
10 :00 -18 :00 - 入館料
<常設展>
一般:9ユーロ、割引料金:7ユーロ、
6歳-18歳:5ユーロ
<企画展>
一般:7ユーロ、割引:5ユーロ、
18歳以下:無料 - アクセス
地下鉄トロカデロ駅 (Trocadéro)より徒歩。 - 企画展情報
「水兵がモードを創る」
Les marins font la mode
2009.2.5-2009.7.26
>>詳しくはこちら
※この企画展の図録は、MMFインフォメーション・センターにて閲覧いただけます。
- MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、カタログやこれまでに開催した展覧会図録など海洋博物館の関連書籍を閲覧いただけます。
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