ピカソ-セザンヌ展 ヴォーヴナルグ城 イベントカレンダー セザンヌゆかりの地を訪ねて
航海の歴史にまつわるヨーロッパ随一のコレクション
 若きピカソがスペインからパリに出てきた最初の10年間、画家は多くの影響をセザンヌから受けました。その後のピカソの人生のなかでは、セザンヌの影は背後に透けて見えるにすぎません。しかし、作品に直接表れていないとしても、ピカソにとってセザンヌは、生涯を通じて大きな支えであり、つねに瞑想し愛したテーマでもあったのです。
開催概要 見どころ

1:セザンヌを見るピカソ
 展覧会の最初の章は、ピカソのパリ時代の初めからキュビスムの終わりまでにあたる1900-1917年の期間、セザンヌがピカソに与えた影響を明らかにします。ピカソはどのようにしてセザンヌの作品と出会ったのでしょうか。展覧会を通じてなのか……、ドラン(Derain)、マティス(Matisse)、ブラック(Braque)、レオ・スタイン(Léo Stein)、ガートルード・スタイン(Gertrude Stein)など友人のアーティストたちを通してなのか……、それともセザンヌも扱っていたピカソの画商アンブロワーズ・ヴォラール(Ambroise Vollard)を通じてだったのでしょうか? ピカソはセザンヌの作品から技法を学ぶだけでなく、絵画の新しい地平を開こうと、作品を熟視していたのでしょう。ピカソのキュビスムの一段階1908-1909年頃は、「セザンヌ的キュビスム」と呼ばれています。
2:セザンヌを集めるピカソ
 ピカソの多くの絵画コレクションのなかでも、セザンヌの作品は、数の上でも、作品の重要度といった点からも特別な位置を占めています。ピカソは自分のコレクションをとても大切にし、絵画はピカソの生活空間になくてはならないものでした。ピカソのコレクションにあった3点のセザンヌ作品は、たいへん優れた名品ぞろいでした。《レスタックの眺め(Vue de l’Estaque)》《浴女(Baigneuses)》《シャトー・ノワール(Le Château Noir)》は、セザンヌの三つの異なる時期、三つの重要なテーマの代表作となっています。
 またピカソは、セザンヌの作品を所有するに留まらず、目利きとしてセザンヌ作品の真贋に関する意見を求められることもありました。セザンヌの作品に関するピカソの思いは格別で、のちにこんな言葉を残しています。
 「セザンヌを知っているかだって? セザンヌは私の唯一無二の師だよ。私がセザンヌの絵をよく眺めていたのを知っているよね……、私は何年も彼の作品を研究してきたんだ」(ブラッサイ『ピカソとの対話』ガリマール出版、1964年、再販1986年、98-99ページ)

3:二人の巨匠、共通のテーマ
 二人の画家は、ある特定の主題に同じように関心をもっていました。例えば、静物画に描かれた白い磁器のジャム壷、骸骨、そして有名なリンゴなどは、二人の画家がともに好んだモチーフです。人物画では、「水浴をする男たち」「水浴をする女たち」といった重要なテーマをはじめ、「肘をつく男」「煙草を吸う男」「肘掛け椅子に座る女の肖像」、そして「アルルカン」なども忘れることはできません。
4:セザンヌに近づくピカソ
 ピカソがサント・ヴィクトワール山麓(Sainte Victoire)のヴォーヴナルグ城(Le château de Vauvenargues)に住んでいた時期は非常に短いものでしたが(ピカソは1961年、コート・ダジュール<Côte d'Azur>のムージャン<Mougins>に購入したノートルダム・ド・ヴィ<Notre-Dame de Vie>で人生最後の10年間を過ごした)、気持ちの上ではヴォーヴナルグに永住するつもりでした。ピカソは自分が集めた絵画や彫刻の大部分、そして仕事場もこの地に移したのです。
 「ヴォーヴナルグ時代」といわれるこの時期は、ピカソの人生において特別な期間として異彩を放っています。カンヌ(Cannes)のピカソの別荘ラ・カリフォルニー(La Californie)の賑やかな日々とは異なり、世間に一線を引いた隠遁生活をした時期であったからです。
 ピカソはヴォーヴナルグの地で、スペインの独裁者フランコ(Francisco Franco)存命中には帰ることを拒んだ故郷を見ていたのかもしれません。この時期にピカソが描いた絵画は、望郷の思いが色濃くにじんでいます。赤、黄、緑などのスペイン独特の色彩が画面を支配しており、とくに、アルル(Arles)で購入したマンドリンを中心とした静物画のシリーズなどが特徴的です。この作品は現在も城の食堂に飾られています。
 城を購入したとき、ピカソはサント・ヴィクトワール山北麓の1,000エーカー以上の土地も同時に買い求めました。つまりピカソは、セザンヌの主要なテーマのひとつを手に入れたという訳です。
 さらに色彩においても、形態の扱い方においても独特なピカソの絵画制作は、妻ジャクリーヌ(Jacqueline)の肖像画シリーズ、アンリII世(Henri II)の食器棚、静物画など、多くの傑作を生み出しています。


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