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大聖堂のすぐ近くにあるランス美術館は、
1067年に建立された聖ドニ修道院だった建物が使われています。
建物は18世紀に拡張され、ランスで唯一ルイ15世(LouisXV)時代の
ロココ様式を留める貴重な遺構として、歴史的建造物に指定されています。
1913年の開館以来、ルネサンスから現代美術まで多岐にわたる
コレクションで多くの人々を楽しませている美術館です。
▲中世の部屋。正面にあるのは現代美術で、ジェラール・ガルースト(Gérard Garouste)の《インディエンヌ》(1987年)。

 ランス美術館の大きな見どころとなっている19世紀の作品の多くは、この地のシャンパン・メーカー、ポメリー社の社長アンリ・ヴァニエ(Henry Vasnier)が1907年に寄贈したものです。ポメリー社は辛口シャンパンを世に出して成功したマダム・ポメリー(Madame Pommery)の時代から、芸術に対する深い興味と理解を抱き続けているメゾンです。マダム・ポメリーは晩年、ミレー(Jean-François Millet)の《落ち穂拾い》をルーヴル美術館に寄付する目的で購入したことでも知られています。
 こうした芸術擁護の姿勢と伝統を引き継ぎ、次代を担ったヴァニエは31歳の頃からコロー(Camille Corot)をはじめとする風景画を収集し始め、バルビゾン派、印象派などの作品を次々と購入します。ついには美術館の開設を目的とした一大コレクションを築くことになりました。また後年には、装飾芸術にもコレクションの幅を広げ、とくにアール・ヌーヴォーの巨匠エミール・ガレ(Émile Gallé)は、自宅のダイニング・セットを注文するほどのお気に入りでした。そのセットはヴァニエの死後、オークションにかけられ、現在は日本の美術館が所蔵しています。ヴァニエは没後、ランス市に600点あまりのコレクションを寄贈することを遺言し、これらの作品を基にしてランス美術館が創設されることになったのです。

▲コローの作品群が並ぶ展示室。

 26点のコロー、モネ(Claude Monet)やピサロ(Camille Pissarro)、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)などの印象派、ロダン(Auguste Rodin)やカミーユ・クローデル(Camille Claudel)の彫刻、エミール・ガレなどの工芸品を集めた部屋は、ヴァニエの指定通りに赤い布地が張られ、まるで彼の私邸での展示を再現したかのような趣きをたたえます。

▲ルノワールの小品。《読み合わせ》制作年不詳。

さらにヴァニエは壁の色や天井の照明といったディテールへのこだわりのほかに、コレクションを分散させないことなどを寄贈の条件としました。展示室を巡れば、自らのコレクションを慈しむと同時に、その楽しみを多くの人々と分かち合おうとしたヴァニエの情熱が感じられることでしょう。

▲ガレの花瓶や机などもある19世紀の部屋。   ▲カミーユ・クローデル《盗賊の頭》(1885年)。

 コレクションの豊かさは、19世紀の作品に限ったものではありません。13枚にのぼるドイツ・ルネサンスの中心画家クラナハ親子(Lucas Cranach)による肖像画作品や、フランスやフランドルの作品を集めた17世紀の部屋、ロココ様式のインテリアとダヴィッド(Jacques-Louis David)の《マラーの死》に代表される18世紀の展示室など、部屋ごとに趣きの異なる作品に出会うことができます。

▲クラナハ親子の肖像画群。16世紀。
▲ダヴィッド《マラーの死》(1793年)。

 また藤田嗣治(Tsuguharu Fujita/Léonard Foujita)やモーリス・ドニ(Maurice Denis)、ゴーギャン(Paul Gauguin)、ボナール(Pierre Bonnard)など20世紀の美術史を飾った画家たちの作品も必見です。さらに、この地で活躍するシモン(Simon)やマルク(Marq)などのステンドグラスの巨匠たちの作品も展示しています。シャンパンの富がもたらした芸術作品の数々は、ランス美術館のなかで黄金の輝きを放ち続けているのです。


田中久美子(Kumiko Tanaka/文・写真)
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シャンパンの聖地とアートの マリアージュ

ランス美術館

  • 所在地
    8, rue Chanzy, 51100 Reims
  • Tel
    +33 (0)3 26 35 36 00
  • Fax
    +33 (0)3 26 86 87 75
  • 開館時間
    10:00-12:00、14:00-18:00
  • 休館日
    火曜、1月1日、5月1日、7月14日、11月1日、11月11日、12月25日
  • 入館料
    一般:4ユーロ
    18歳未満:無料
    ※毎月第1日曜は無料
  • アクセス
    バス2、4、5ラインにて「Rockfeller」下車。
    トラムA、Bにて「Opéra」下車。

MMFで出会えるランス美術館

  • MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、ランス美術館に関するパンフレット(仏語)や図録、展覧会カタログを閲覧いただけます。

 

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