偉人が眠る記念の地−アンヴァリッド

立体地図博物館 © musée de l'Armée - Paris / Pascal Segrette

軍事博物館の<近代部門>の上階にあるこの博物館では、中世から19世紀にかけて、要塞の建設のために使用された立体地図という珍しいコレクションを紹介しています。

ルイ14世の時代に始まった立体地図の歴史

▲立体地図の製作を行う技師の様子
©Musée des plans-reliefs

 城塞都市を再現した、フランス語でプラン=ルリエフ(plans-reliefs)と呼ばれる立体地図(レリーフ・マップ)は、かつてのフランスでは戦術のための道具として重要な役割を果たしていました。その起源は17世紀のルイ14世の時代にさかのぼります。1668年、当時の陸軍大臣ルーヴォワ候の指揮のもと、初めて立体地図の製作が行われました。軍事技術者は要塞や砦の建設の際、この立体地図を使用して、敵陣の包囲をシミュレーションしながら建設工事を行ったのです。国境に近い防御対象の町は要塞を中心に、大砲の届く限界のラインの土地まで忠実に再現されました。3次元で作られたこの地図は各地にあったさまざまな要塞の全体像を明らかにし、君主に明確に戦術について説明を与えることができました。ルイ14世は次々に新たな立体地図の製作を注文し、1680年代に立体地図は領土の防御を計画するための最も重要な表現手段となりました。続くフランス革命、ナポレオンの帝政時代と、立体地図はその精度をより進化させながら使用が続けられました。初めて立体地図が作られた1668年から約200年後の1870年までの間にフランスで製作された立体地図の数は、150地域、260点にものぼります。

▲アキテーヌ地方ブライ(Blaye)の立体地図の一部(1703年)
©Musée des plans-reliefs
▲城塞都市ヌフ=ブリサッシュ(Neuf-Brisach)の模型の細部(1703年)
©Musée des plans-reliefs

歴史を証言する、貴重な立体地図のコレクション

▲博物館の導入部では立体地図の歴史や技術を紹介する展示が行われている。

 この博物館のコレクションは、1700年にルイ14世がルーヴル宮に立体地図を集めたことが始まりです。ルーヴルに絵画が展示されることになるのをきっかけに、コレクションは1777年にアンヴァリッドに移され、時代が移りゆく中、19世紀末までコレクションを増やしていきました。ほかには例を見ないこのユニークなコレクションは1927年には歴史モニュメントに指定され、1943年にこの博物館が誕生します。

▲アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯』で有名なイフ島の立体模型。
©Musée des plans-reliefs

 展示されている大部分の模型は約600分の1の大きさで作られており、要塞と周辺の町並みを木、紙、絹糸、砂などの素材を使用し再現しています。注意深く観察すると、建物の煙突や窓、レンガの壁など、それら一軒一軒に施された緻密な表現に驚かされます。また当時の建築を残す現在の町並みの航空写真と見比べると、模型がいかに正確に作られているかが分かります。これらの立体地図は中世から1870年までの要塞の歴史を語り、また大砲の射程距離の進歩の変遷を証言する貴重な資料です。そしてそれだけでなく、現在は存在しない当時の重要な文化遺産の様子を伝えてくれるため、都市研究の資料としても利用されています。

▲現在は保養地として有名なサン=トロペ(Saint-Tropez)の立体地図の細部(1716年)
©Musée des plans-reliefs

 現在この博物館は約100点の立体地図を所蔵しており、ギャラリーにはそのうちの28点が展示されています。フランス北西のマンシュ、大西洋沿岸地方、ピレネー、地中海地域の展示を行っており、中でも状態のよい作品を中心にセレクションされています。現在はコレクションの一部のみの展示に留まっていますが、博物館のギャラリーはいずれスペースが拡大され、展示品も増やされる予定です。

Update :2010.11.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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PARIS MUSEUM PASS 利用可能施設

立体地図博物館

  • 所在地
    Hôtel national des Invalides 
    129 rue de Grenelle 75007 PARIS
    (軍事博物館内<近代部門>の上階)
  • URL
    http://www.museedesplansreliefs.culture.fr
  • 開館時間
    <10月1日〜3月31日>
    10:00-17:00
    <4月1日〜9月30日>
    10:00-18:00
    *日曜日は開館時間30分延長
    *4月〜9月の毎週火曜日は21 :00まで
  • 休館日
    毎月第1月曜日(7月〜9月を除く)、
    1月1日、5月1日、11月1日、
    12月25日
  • 入館料
    一般:9ユーロ
    割引料金:7ユーロ
    18歳以下:無料
    *軍事博物館、ドーム教会、立体地図博物館、レジスタンス解放博物館の共通チケット。
    *アンヴァリッドと近くのロダン美術館には、入館料の相互割引制度があります。どちらかのチケットを購入し、もう一方のミュゼで半券を提示すれば、割引料金にて入館できます。
  • アクセス
    地下鉄8番線Latour-Maubourg駅またはInvalides駅、13番線Varenne駅または Saint François-Xavier駅、RER C線Invalides駅

MMFで出会えるアンヴァリッド

  • インフォメーション・センターでは、アンヴァリッドの関連書籍やパンフレットを閲覧いただけます。
 

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