グラン・パレナショナルギャラリー クロード・モネ 大回顧展

モネが旅したフランス、モネが描いた人々 〜展覧会 前半の展示〜

モネが愛し、描いたフランス各地の風景

▲《サンタドレスのテラス》1867年
© Metropolitan Museum of Art, dist. service presse Rmn / image of the MMA

 モネといえば《睡蓮》が連想されるように、人生の後半にはひたすらジヴェルニーの庭を描き続けましたが、その画業の始まりには、どのような場所を好み、どのようなモチーフに惹きつけられたのでしょう。

 展覧会はまず、1860年代から1890年までにモネが描いた風景画を、その場所ごとに紹介することから始まります。戸外制作の基礎を学んだ「フォンテーヌブロー」、モネの故郷でもある「ノルマンディー」の海、印象派の画家たちが集まった「アルジャントゥイユ」、そして青年時代を過ごしたパリの街やパリ郊外のセーヌ河流域と、モネの眼が捉えた景色が、カンヴァスを通して次々に蘇ってきます。

 1860年代後半から1870年代にかけて、モネは港町や鉄道、駅などの近代的な環境に関心を向けました。1877年にモネが頻繁に描いたサン・ラザール駅は19世紀の産業発達の象徴であり、当時としては、この上なくモダンな絵画のテーマであったといいます。美術批評も行った小説家のゾラ(Émile Zola)はこのサン・ラザール駅の作品について、「先人が森や川といった自然に詩情を見出したのと同じように、モネは駅にそれを見出した」と称えました。カンヴァスには機関車からのぼる蒸気が効果的なタッチで描かれており、画面から汽笛の音が鳴り響いてくるかのような臨場感です。

▲《サン・ラザール駅の外(信号)》1877年
© Niedersächsisches Landesmuseum, Hanover

 そして、1880年代は旅の時代でした。地中海で触れた新しい光、ブルターニュ地方のベル・イル島の切り立った断崖、ベリー地方のクルーズ渓谷の野性的な風景──。会場のひとつひとつのセクションを巡っていくと、多様な景観を求めてフランス各地を旅したモネが、刻一刻と微妙な変化を遂げてゆく自然に魅了されていたことがよく分かります。

▲《氷解 曇り空》1880年
© Museu Calouste Gulbenkian, Lisbon, Portugal
▲《マンヌポルト》1883年
© Metropolitan Museum of Art, dist. service presse Rmn / image of the MMA

このセクションでは、ノルマンディーの海やセーヌ河流域をはじめとした水辺を描いた作品が非常に多いのが特徴です。地中海のエメラルドグリーンの穏やかな海やベル・イル島の断崖にぶつかる大西洋の波、モネがダイヤモンドのように輝くと手紙に綴ったクルーズ川の水面……。画家を魅了したさまざまな「水」の表情を存分に味わうことができます。

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モネの描いた人物と静物

▲《草上の昼食》1865-1866年
© Musée d'Orsay, Dist. RMN / Patrice Schmidt

 風景画に続くのは、人物画と静物画です。風景画に比べ希少なジャンルのため小さなスペースでの展示ですが、サロン出品の大作を含む充実した内容です。

 モネはキャリア初期の25年間にときおり人物画を描いていました。マネ (Édouard Manet) やクールベ (Gustave Courbet) に倣い、現代生活をテーマに描いた《草上の昼食》は、等身大の人物が描かれた野心的な大作でした。結局、サロン出品が見送られたこの作品は、その後切断されてしまい、現在は、オルセー美術館にその中央部の断片と左部分が残されています。今回は、これまでオルセーを出ることのなかったこの2点に加え、作品の全体像を示すプーシキン美術館所蔵の習作、さらにはあまり知られていないワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の習作を並べて鑑賞できる初めての機会として、話題を呼んでいます。

▲《庭の女たち》1866年
© service presse Rmn / Hervé Lewandowski

 また、モネはキャリアの初期から1880年代の中頃まで、比較的頻繁に静物画を描いていました。悪天候の日や早急に絵を売らなければならない場合、また自身の技術を鍛えるためと、描いた動機はさまざまだったようです。室内の柔らかい光のもとで描かれた花や果物などの静物は、写実的な要素が多く見られ、モネの培った確かな技術に改めて気づかされます。

▲《メロンのある静物》1872年
© Museu Calouste Gulbenkian, Lisbon, Portugal
▲《死の床のカミーユ》1897年
© RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski
▲《瞑想 ソファのモネ夫人》1870-1871年
© service presse Rmn / Gérard Blot

モネの人物画にはモネのひとり目の夫人、カミーユ (Camille Doncieux) が頻繁に登場します。カンヴァスの中にはあまり理想化のされていない、若い女性の慎ましく穏やかな様子が描かれています。1879年のカミーユの死に際して、その死顔を描いた作品は、当時モネが頻繁に描いていたセーヌ河に浮かぶ氷のようなタッチで描かれており、そこから妻を失くしたモネの悲しみが伝わってくるようです。

Update :2010.12.1
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クロード・モネ 1840-1926

  • 会期
    2010年9月22日(水)-
    2011年1月24日(月)
  • 会場
    グラン・パレ・ナショナル・ギャラリー
  • 所在地
    3 avenue du Général-Eisenhower 75008 Paris(シャンゼリゼ入り口)
  • Tel
    +33(0)1 44 13 17 17
  • URL
    http://www.monet2010.com/jp
    (日本語)
  • 開館時間
    10:00-22:00
    *火曜日は14:00、木曜日は20:00まで
    *12月18日〜1月2日のヴァカンス期間中は毎日9:00-23:00
    ただし、12月24日と12月31日は18:00まで
  • 休館日
    12月25日
  • 入館料
    一般:12ユーロ
    13歳-25歳:8ユーロ
    13歳未満:無料
    *オランジュリー美術館とセットのチケット:18ユーロ(一般)
  • アクセス
    地下鉄1番線、13番線Champs-Elysées-Clemenceau駅

MMFで出会えるモネ大回顧展

 

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