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ポンピドー・センター=メッス ローラン・ル・ボン館長へのインタビュー

第1回目の企画展「傑作?≪CHEFS-D'OEUVRE ?≫」と今後の展覧会

現在の企画展は「傑作?」というタイトルですが、 第1回目の展覧会にこのテーマを選んだ理由を教えてください。

▲中央展示室への入り口
© Centre Pompidou-Metz

L.L.:第1回目の展覧会のテーマの選択は常に難しいものです。たくさんのリクエストがあり、さらに素晴らしい建築にふさわしいものでなくてはならないため、決めるのは簡単ではありませんでした。街を歩いていた時、住民の方々から「建築は美しそうだけれど、引き出しや倉庫の奥にしまい込まれたよくない作品がやってきて、傑作はパリにとどまるのでしょう?」と言われました。

 こうした意見を耳にしたおかげで、私たちは「傑作」という概念について改めて考えることができました。「傑作」という言葉は展覧会のタイトルに頻繁に使用されますが、「傑作」の概念そのものをテーマにした展覧会というのは行われたことがありません。それは美術史の文献をひもといても同じで、傑作の概念に関する本というのはほとんどありません。今回の企画展のタイトルは複数形で、かつ疑問符が付いており、断定の意味は込められていません。根底にある私たちの意図は、傑作の概念を問いかけるということです。こうしたたぐいの展覧会というのは、教育的であるのが面白いと思っています。

▲第一展示室「『傑作』の歴史」(※1)

また実際にこの質問に対する答えのヒントをお教えするとしたら、「傑作」というのはあなた方自身のことということができるでしょう。日本やアメリカ、そしてメッスから多くの来館者がいらっしゃることで、約800点もの素晴らしい作品を驚きとともに公開することができたのです。
 展示作品は20世紀のものだけでなく、中世にまでさかのぼります。なぜ中世かというと、1280年、フランス語に「傑作」という言葉が初めて生まれたからです。これはヨーロッパの言語においても初めてのことでした。というわけで、今回の展覧会は約5,000m2の展示室いっぱいを使って、中世の時代から始まります。

今回の展覧会で注目すべき展示はなんでしょう?

▲中央展示室(※2)

L.L.:「どの作品があなたにとって傑作ですか?」と、ときどき聞かれますが、それがこの展覧会の意図しているところです。この企画展はそうした問いかけがテーマです。問いかけ、批評することで、皆さんおのおのが楽しみ、さまざまな機会を持てるのです。
 とはいいつつ、ふたつ目のギャラリーの「傑作の夢」という展示の最初の部分、小さな窓から作品の一部をのぞくことができる展示は、今回の企画展でも人気が高いようです。それに大聖堂の眺めも好評です。またドローネー(Robert Delaunay)の装飾やミロ(Joan Miró)の青の3つの連作なども大変気に入っていただいています。つまりそれぞれが「個々の神殿をつくる」ことが可能というわけです。それがこの展覧会の見どころといえるのではないでしょうか。

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次回の企画展について教えていただけますか?

L.L.:次回は、どちらかといえば多領域にわたる美術史全体をカバーするテーマ研究の展覧会を行う予定です。現在進行中の3つのプロジェクトをお話ししますと、ひとつ目はラビリンスの概念について。かたちの歴史において、また中世から現代にかけての美術史を通観した歴史の中で、ラビリンスとは何かを探ります。

 そしてふたつ目の展覧会は、1917年周辺に関するものです。ご存じの通りロレーヌ地方にとって、第一次世界大戦はとても重要な出来事でした。なぜ1917年かというと、ピカソ(Pablo Picasso)が『パラード』の舞台装飾を手がけた年であり、ピカソのキャリアにおいて素晴らしい時期であったからです。世界大戦の真っただ中でしたが、この頃レジェ(Fernand Léger)、ブラック(Georges Braque)、モンドリアン(Piet Mondrian)、マティス(Henri Matisse)も同様に作品の制作を行っていました。この企画展は、戦時中のクリエーションについて問いかけるものとなります。

 そして3つ目には、高所からの眺めに関するものを予定しています。気球や飛行機に乗って高い場所から世界を眺めることが可能となった時、美術史において起こった革命とは何だったのかを問います。

最後に日本人来館者にひと言お願いします。

L.L.:日本人であるポンピドー・センター=メッスの建築家が言ったように、日本人の方々にも自分の家にいるように感じていただけたらと思います。ここはすべての人々、そして現代アートの偉大な仲間である日本人の方々に開放された家なのですから。

インタビュー実施日:2010年6月25日
場所:ポンピドー・センター=メッス

(※1)
中央: Alexander Calder, 31 janvier,1950 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Achat de l'état, 1950, attribution, 1959 © Calder Foundation New York / Adagp, Paris 2010).
壁面左から : Aurelie Nemours, Demeures 20, 1958 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Achat de l'état, 1975, attribution, 1977). Victor Vasarely, Tauri - R, 1966/1976 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Don de l'artiste, 1977). Raymond Hains, La Grille, 1948 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Don de l'artiste, 1978).
© Adagp, Paris 2010.

(※2)
手前 : Carl Andre, 144 Tin Square, 1975 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Achat, 1987).
左: Nicolas de Staël, L'Orchestre, 1953 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Don de Sophie et Jérôme Seydoux, 2003). Joan Miró, Femme, 1978 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Don de l'artiste, 1979).
右奥 : Alberto Giacometti, Femme égorgée, 1932-1933/1940 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Achat en vente publique avec la participation du Fonds du Patrimoine, 1992). Joan Miró, étoile, nichons, escargot, soleil, com ète, palpitation de la chair, 1937 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Achat, 1976). Joan Miró, Portrait d'une danseuse, printemps 1928 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Don de Mme Aube Breton-Elléouët, 2003). Alexander Calder, Joséphine Baker IV, vers 1928 (Centre Pompidou, Musée national d'art moderne, Paris. Don de l'artiste, 1966).
© Adagp, Paris 2010. © Succession Giacometti / Adagp, Paris 2010. © Succession Joan Miró / Adagp, Paris 2010. Photo Roland Halbe

Update :2010.9.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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ポンピドー・センター=メッス

  • 所在地
    1, parvis des Droits de l'Homme CS 90490 F-57020 Metz Cedex 1
  • Tel
    +33(0)3 87 15 39 39
  • URL
    http://www.centrepompidou-metz.fr
  • 開館時間
    月曜、水曜 11:00-18:00  
    木曜、 金曜 11:00-20:00
    土曜 10:00-20:00
    日曜 10:00-18:00
  • 休館日
    火曜日
  • 入館料
    一般:7ユーロ
    26歳未満 :無料
  • アクセス
    パリ東駅よりTGVの直通電車で1時間20分。

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