5階の印象派のギャラリーに足を踏み入れると、まず目に留まるのが入口正面に展示されている、オルセーの最も重要なコレクションのひとつ、マネ(Édouard Manet)の《草上の昼食》です。かつてオルセーの0階(日本の1階に相当)に展示されていたこの作品は、改装を機に5階のギャラリーへと移動されました。ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)、モネ(Claude Monet)、セザンヌ(Paul Cézanne)など、1860年代から1900年代にかけてのオルセー自慢の印象派コレクションが一堂に会するこのギャラリーの鑑賞は、「印象派の父」と称されるマネによる、記念碑的作品から始まることとなりました。
さらに、白やベージュなど明るい色味を使用していた以前の展示室から一転し、グレーの壁と深い色味の板張りの床が採用されたことで、ギャラリー全体のイメージもガラリと変わっています。この空間の色の変更に加え、天窓からの自然光と強弱の変更可能なスポットライトの採用とがあいまって、ひとつひとつの作品が持つ、印象派特有の明るい色調が、以前よりも強調されて見えることに気付かされます。
そして、このギャラリーでもうひとつ注目したいのが、日本人デザイナー吉岡徳仁(よしおかとくじん)によるスタイリッシュなベンチ、《ウォーター・ブロック》です。水をイメージした分厚いガラス製のこのベンチは、館長のコジュヴァル氏によって選ばれた作品で、いわば“座れる芸術作品”です。照明のもとで虹色の輝きを見せるこの吉岡氏の作品は、水辺が頻繁に描かれている印象派の作品と呼応し合うかのように、展示室に溶け込んでいるのが印象的です。
美術館2階の「フランソワーズ・カシャン」と名付けられたギャラリーは、5階の印象派の展示室に続く、オルセーの重要な見所です。ゴッホ(Vincent van Gogh)、ゴーギャン(Paul Gauguin)といったオルセー所蔵のポスト印象派の作品が、かつての5階の展示室からこのギャラリーへと移動されたことで、来館者の見学を従来よりもスムーズにすることに成功しています。そして以前はそれぞれ別の展示室に飾られていたゴーギャン、ゴッホの作品は、今回の改装で同じ空間で対峙しています。ふたりが親交を結んだ当時のように、彼らの作品が対話をしているかのような場が作り出されることとなりました。
さらに、このギャラリーの展示はスーラ(Georges Seurat)をはじめとした新印象派、そして1890年前後のナビ派へと続きます。旧オルセー時代の入り組んだ見学経路を刷新し、19世紀末から20世紀初頭にかけての芸術の流れをよりスムーズに、かつ明確にたどることができるようになりました。
- 所在地
62, rue de Lille 75343 Paris - Tel
+33 (0)1 40 49 48 14 - URL
http://www.musee-orsay.fr/fr/ - 開館時間
9:30-18:00
木曜日は9:30-21:45 - 休館日
月曜日、1/1、5/1、12/25 - 入館料
一般:8ユーロ
割引料金:5.5ユーロ
18歳以下:無料
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