死後60余年の歳月を経て実現した待望の美術館建設
ボナールは、1947年、79歳で亡くなりました。それから60余年――。そもそも2011年になるまでこの有名画家の美術館がひとつもなかったのはなぜでしょう?
その理由は「ボナールの性格によるところが大きい」とボナール美術館のヴェロッニク・セラノ(Véronique Serrano)学芸員は言います。「死後の作品の行方を気にかけて準備を整えたピカソやマティスと異なり、控えめな性格のボナールは生前、自分の美術館をつくろうという意志がなかったのです」。また作品の帰属権を明確にしていなかったため、死後20年間も法廷での争いが続きました。
その間に価格は高騰、ボナールの作品は、地方公共団体が収集できるようなものではなくなっていました。時代は下り2000年代になると、地方美術館設立の動きが各地で活発になり、ようやくル・カネ市でも待望の美術館をつくる環境が整ったのです。
2007年、ボナールが21年間暮らしたル・ボスケ荘とその庭は、歴史的建造物に指定されました。しかし現在も住宅として使われており、残念ながら見学することはできません。そのため、麓にあるル・カネ市の中心部に美術館が建設されることになりました。
美術館の骨格をなす「サン=ヴィアネ館」は1908年に建てられた典型的なベル・エポックの建築物です。セラノ学芸員は「何しろ、ル・ボスケ荘が使えないので、場所については、かなり考え抜きました。ボナールと同時代の建物で、彼の生活圏内にあることから『サン=ヴィアネ館』を選んだのです」と言います。
約150点からなるボナールの珠玉のコレクション
現在、美術館が有するコレクションは約150点。そのうち、ほかの美術館や個人コレクションからの預託作品が50点を占めています。画家の全体像がつかめるように、若い頃のいわゆる「ナビ派時代」の作品、ポスターや彫刻、写真、家具の素案なども展示しています。しかし、コレクションの中心を占めるのは、やはり何といってもボナールが当地に定住するようになった「ル・カネ時代」の作品です。
《裸》や《ル・カネの食堂》、《南仏の風景》では、熟れきった果実が甘味を凝集するように、だいだい色と黄色が厚みを増し、さまざまな実験を試みてきた画家の成熟が見て取れます。そして《日暮れの海水浴客》では、日が落ちる直前に一瞬燃え上がる発光物のような人物群を白の厚塗りでとらえています。静謐の中に生命の力がみなぎり、現実の対象物は消え失せ、心象に残る色彩だけで創られた世界があるかのようです。
- 所在地
16 boulevard Sadi Carnot 06110 Le Cannet - Tel
+33(0) 4 93 94 06 06 - URL
http://www.museebonnard.fr/ - 開館時間
10月中旬〜4月中旬:10:00-18:00
4月中旬〜10月中旬:10:00-20:00
毎週木曜日は21:00まで - 休館日
月曜日、1月1日、5月1日、11月1日、
12月25日 - 入館料
<コレクション展示期間>
一般:5ユーロ
割引:3.5ユーロ
<企画展>
一般:7ユーロ
割引:5ユーロ
※ボナール美術館は、1年のうち数カ月を「企画展」、それ以外の期間を「コレクション展示期間」として所蔵作品を展示しています。 - アクセス
パリのLyon駅からCannes駅までTGVで約5〜6時間。空路ならパリのシャルル・ド・ゴール(Charles-de-Gaulle)空港、またはオルリー(Orly)空港からニース(Nice Côte d’Azur)空港まで約1時間半。ニース空港からカンヌ市内まで約25km、車で約30〜40分。Canne駅から1番系統バスでMairie du Cannet下車(所要時間約20分)。タクシーでは駅前から約10分。
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