散歩で目にした光景を作品に昇華させる
ル・ボスケ荘の住人ボナールは、毎日散歩を欠かしませんでした。ポケットに手帳を忍ばせ、自然に耳を傾け、神経を研ぎすまし、目に入るイメージや吸い込んだ香りを記憶にしまい込みました。そして手帳を取り出し、光線の具合や天気などのデータをメモしました。《南仏の風景》を描いた頃にこう語っています。「私はいつも題材を手元に並べておきます。題材に関わるものを見たらすぐメモを取り、家に帰って熟考します。そうした熟考の末、制作にとりかかるのです」。
かつての印象派のように画架を戸外に持ち出すのではなく、イメージを頭の中に持ち帰り、アトリエで熟成させるのがボナール流でした。身近な題材ばかりを扱ったために「アンティミスト(親密派)」という呼称もあるくらいですが、実際、ル・カネで描かれた作品のほとんどが室内と庭、家の周辺です。永遠の旅人さながらに、ボナールは散歩を本当に大切にしていたようです。
ボナールも歩いた
旧市街から「ボナールの散歩道」へ
美術館を出たら、当時の面影を残す旧市街を歩いてみましょう。現在のル・カネの中心は、市役所や美術館が並ぶバス通り沿いです。このバス通りはカンヌ駅につながり大変便利である一方、そのたたずまいは、現代的なカンヌの一部といった印象です。これに比べ、ボナールが生きた20世紀初頭の雰囲気を色濃く残す地区がバス通りの北側にあります。まず、美術館北側に隣接するのがサント=フィロメーヌ教会。ここでボナールの葬儀が執り行われました。教会裏手の階段を上っていくと、旧市街を貫くサン=ソヴール通りに出ます。
この辺りはボナール夫妻の日常生活に関わったエリアです。サン=ソヴール通りを左に曲がると通りの両側に絵画教室や職人のアトリエが軒を連ねています。そしてまもなく旧市街の中心「ベルヴュー広場」が現れます。広場の角にあるレストラン「オー・ザンジュ(Aux Anges)」は学芸員のセラノさんもおすすめ。(現在移転。2018年9月時点の住所:283,rue Saint-Sauveur - 06110 LE CANNET)かつてはボナールが通ったカフェだったそうです。天候に恵まれれば、ここからル・カネの家並みと地中海を望む景色を楽しむことができるでしょう。壁面にはル・カネ出身者たちの顔が描かれています。
さらに、体力と方向感覚に自信のある方は「ボナールの散歩道」(全長4.5km、徒歩の所要時間約2時間)に挑戦するのもよいでしょう。ルートは美術館の西隣にあるル・カネ市役所から始まり、サン=ソヴール通りを右へ。町の北側に広がる丘陵地をくねくねと縫うように登っていきます。現在では住宅と樹木が密集しており、パノラマの景色はなかなか得られませんが、道端の5カ所に案内板が設置されており、ボナールの描いた風景画と方向が示されています。地図の載ったパンフレットは美術館受付に置いてあります。ただし歩道のない道も多いのでくれぐれもお気をつけて。
「B1Fのインフォメーションセンターではボナール美術館の展覧会カタログ
『ボナールとル・カネ、地中海の光の中で』」がご覧になれます。
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- 所在地
16 boulevard Sadi Carnot 06110 Le Cannet - Tel
+33(0) 4 93 94 06 06 - URL
http://www.museebonnard.fr/ - 開館時間
10月中旬〜4月中旬:10:00-18:00
4月中旬〜10月中旬:10:00-20:00
毎週木曜日は21:00まで - 休館日
月曜日、1月1日、5月1日、11月1日、
12月25日 - 入館料
<コレクション展示期間>
一般:5ユーロ
割引:3.5ユーロ
<企画展>
一般:7ユーロ
割引:5ユーロ
※ボナール美術館は、1年のうち数カ月を「企画展」、それ以外の期間を「コレクション展示期間」として所蔵作品を展示しています。 - アクセス
パリのLyon駅からCannes駅までTGVで約5〜6時間。空路ならパリのシャルル・ド・ゴール(Charles-de-Gaulle)空港、またはオルリー(Orly)空港からニース(Nice Côte d’Azur)空港まで約1時間半。ニース空港からカンヌ市内まで約25km、車で約30〜40分。Canne駅から1番系統バスでMairie du Cannet下車(所要時間約20分)。タクシーでは駅前から約10分。
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