フランス初のデジタル美術館 ゲテ・リリック Gaîté Lyrique

パリで話題のデジタル・アートの実験室

▲中に入ると不思議な音が流れるサウンド・アートの部屋「chambre sonore(音の部屋)」
©PHILIPPE RUAULT

 古い歴史を持つパリ。しかし、この街は常に時代に歩調を合わせて進化し続けてきました。21世紀が幕を開けた2001年にゲテ・リリックのプロジェクトが始まった当時、デジタルというメディアは人々の日常に浸透しつつありましたが、パリの美術館やアート施設におけるデジタル分野での新たな試みは、まだ始まったばかりでした。そのため、デジタル・メディアの中心、または交差点となるような場を目指し、パリで初めての総合的なデジタル・アートを専門とする施設「新生ゲテ・リリック」が、アーティストやパリ市民はもちろん、訪れる人すべてに開かれた場として誕生したのです。

▲アクティビティーのプログラムが床に映し出される

 パリには多くの美術館やアートセンターがありますが、ひとつの場所でアートが構想、創作、展示、そして研究されるような総合的な施設はこのゲテ・リリック以外にはほかにありません。ここで行われるデジタル・アートの試みは、グラフィック・アートと音楽のコラボレーション、デジタル・サイネージ(デジタル掲示板)を使ったインスタレーション、ゲームのデータベース化や開発などと多岐にわたり、既存の概念に捉われない、自由な発想で企画されています。つまり、ゲテ・リリックはデジタル・メディアの実験室なのです。例えばゲテ・リリックのウェブサイトは情報を発信するだけでなく、それ自体が実験のひとつとして機能しています。今年8月に行われた「Filling up the Internet」というプロジェクトでは、誰もが携帯電話のアプリケーションを使ってネット上で「作品」の創作に参加でき、そのヴィジュアルがゲテ・リリックのウェブサイトや展覧会、広告などに使われる、という試みが行われました。

▲用途に合わせて変形可能なホール
©MANUELLE GAUTRAND ARCHITECTURE - PHOTO : VINCENT FILLON

 ゲテ・リリックのコンセプトは、「デジタルを巡るあらゆるアートシーンの創作の場」を「あらゆる年齢層の、あらゆる職種の人々に開放する」こと。総支配人のデロルマス氏は「主役となるのはアーティストと観客。ゲテ・リリックの役目は彼らのための〈箱〉を用意して提供することにある」と語っています。そのため、〈箱〉の中身となる展示内容やアクティビティーは、実験的で多様な内容となることが予想されましたが、建築家ゴートランは、残っている19世紀の建築要素を生かしながら、どんな形にも姿を変えられるような、ニュートラルでフレキシブルな空間を造り上げ、「デジタル・アートの創作のための『道具箱』のような現代的施設」を誕生させたのです。会場を訪れると、人々の受け入れを目的として造られたこの施設全体の、開放的な雰囲気がよく伝わってきます。

▲3階の大ホールとカフェをつなぐ広場
©MANUELLE GAUTRAND ARCHITECTURE - PHOTO : VINCENT FILLON
▲この広場も展示スペースになる
©maxime dufour photographies

 企画に合わせて毎度様変わりするゲテ・リリックは、いつ行っても斬新で刺激的な体験ができる場として、情報に敏感なパリの人々が常に注目する、話題の的になっています。

Update:2012.11.1 文・写真:中澤理奈(Lina Nakazawa)
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ゲテ・リリック Gaîté Lyrique

  • 所在地
    3 bis rue Papin 75003 Paris
  • Tel
    チケット窓口
    +33(0)1 53 01 51 51
    総合窓口
    +33(0)1 53 01 52 00
  • URL
    http://www.gaite-lyrique.net/
  • 開館時間
    14:00-20:00
    火曜日は22:00、日曜日は18:00まで
  • 休館日
    月曜日
  • 入館料
    無料
    ワークショップ、コンサート、講演会などは別途要入場料
  • アクセス
    地下鉄3、4番線Réaumur-Sébastopol駅または地下鉄3、11番線Arts et Métiers駅下車
  • 展覧会情報
    「Hello™H5」
    2012年10月11日〜12月30日
 

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