Dossier special - 海外の特集

  • 1.レジャーの流行と印象派の画家たち
  • 2.水辺の夏第1章-第2章
  • 3.水辺の夏第3章-第4章

カン美術館「水辺の夏−レジャーと印象派」展

第1章 砂浜にて

▲砂浜のレジャーを描いた作品の展示風景

 展覧会冒頭のテーマとなるのは砂浜です。海を背にした砂浜の上に、子どもが戯れる様子や都会的な装いで余暇を楽しむ上流階級の人々の姿が描かれています。海と都会の人々が同じカンヴァス上に頻繁に収められるようになるのは、戸外のレジャーが発達した19世紀ならではの現象です。漁師や船乗りに代わり、スーツやドレスを身にまとった人々が海辺の風景の新たな登場人物となったのです。地方の自然の風景が、観光地の風景として生まれ変わり、アーティストたちに新しいインスピレーションを与えた時代でした。

[この作品に注目!]ポール=セザール・エルー《浜辺で読書をするエルー夫人》1896年バイヨンヌ美術館所蔵

©Musée Bonnat-Helleu, Bayonne / photo A. Vaquero

 モネと深い親交のあった画家エルー(Paul-César Helleu/1859-1927)は遠洋航路の船長を父に持ち、自らもノルマンディの海をヨットで航海するなど、海を愛した画家でした。この作品はノルマンディのドーヴィルかトルヴィルと思われる浜辺で、妻であるエルー夫人が読書にふけっている様子を描いています。手に持った黒のパラソルを背景に、白く優雅な夫人の横顔が強調されているのが印象的です。夫人の髪や肩には、砂浜から照り返す繊細な光が素早いタッチで巧みに表現されています。

第2章 水のスペクタクル

 避暑地へとやってきたヴァカンス客の目的は、気分転換と同時に新しい刺激を求めることでした。それは画家たちにとっても同様です。親族が別荘を所有していたことから、モネは定期的にノルマンディの地で休暇を過ごしました。そして海沿いの散歩道や砂浜にイーゼルを立て、滞在を自らの制作期間にあてたのです。ヴァカンス地での滞在は家族と過ごす穏やかな時間であると同時に、制作意欲を刺激する新しい風景との出会いの場でした。そうした理由からも、レジャーを描いた作品には画家自身の家族が登場することが珍しくありませんでした。

▲ベルト・モリゾ《ロリアンの小さな港》1869年
ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵 
©National Gallery of Art, Washington
▲アルフレッド・ステヴァンス(Alfred Stevens/1823-1906)《オンフルールの海辺の姉弟》1891年
オルセー美術館所蔵
©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski

[この作品に注目!]クロード・モネ《トルヴィルのロッシュ・ノワールホテル》1870年 オルセー美術館所蔵

©Rmn-Grand Palais / Hervé Lewandowski

 1870年の夏にノルマンディのトルヴィルで描かれたこの作品は、印象派の象徴とも呼べる傑作です。明るい色調と揺れ動くような筆触、大胆な左右非対称の構図など、印象派独特の技法がカンヴァス上で果敢に試されています。建物や地面に反射する光の色彩は、夏の強くまぶしい日差しそのもの。画面左手で大きくなびく旗と帆綱は、沖から吹く強い潮風を表しています。画面にはほとんど海面が描かれていないにもかかわらず、海の気配を強く感じることができる作品です。

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注目の作品をご紹介します。>>

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Update:2013.8.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

ノルマンディ印象派フェスティバル2013 Festival Normandie Impressionniste2013

会期
2013年4月27日(土)〜
9月29日(日)
会場
ノルマンディ各地
URL
http://www.normandie-impressionniste.fr/

「水辺の夏―レジャーと印象派」展

会期
2013年4月27日(土)〜
9月29日(日)
会場
カン美術館
所在地
Le Château - 14000 Caen
Tel
+33 (0)2 31 30 47 70
URL
http://www.mba.caen.fr/
開館時間
10:00 - 18:00
休館日
5月1日、5月9日
観覧料
一般:9ユーロ
割引:6ユーロ
アクセス
パリ、St Lazare駅から電車で約2時間15分、Caen駅下車。
トラムに乗りSaint-Pierre駅下車
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