約100点の油彩の出品作の中から、モネをはじめとした注目作品をピックアップ。ルーアン美術館のシルヴァン・アミック(Sylvain Amic)館長による解説で、本展覧会の鑑賞のポイントをご紹介します。
モネはオランダに何度か旅行し風景画を描きましたが、それらの作品はフランスではあまり知られていません。この作品はオランダのザーンダムで描かれた作品で、印象派の初期作品の中の傑作です。モネならではの技術を駆使し、とても優雅な色使いで建物が描かれています。
水面にはすべて水平に細かく筆が置かれ、風景を反射する水の揺動が表現されています。同室に展示されているヨンキント(Johan Barthold Jongkind/1819-1891)やブーダン(Eugène Boudin/1824-1898)による水の風景と比べても分かるように、印象派はそれまでの古典的な水の反射の表現に、明白に「動き」をもたらしました。
港や船舶はフランス絵画において、それほど頻繁に取り上げられるモティーフではありませんでしたが、印象派の画家たちの間では、このテーマが大変流行しました。1875年にアルジャントゥイユで描かれたモネの作品では、密度の高いレンズ状の細かい筆触で水の反射が繊細に表現されています。反面、修理中の船舶を描いた1873年頃の作品では、書道のようなジグザグ状の大胆なタッチで水の反射が描かれています。数年の間に、モネは水の表現を多様に変化させました。水の反射は印象派にとって、とめどないインスピレーションを与える無限のテーマであったのです。
橋は、水と空の間に挟まれた特上のモティーフです。モネの《アルジャントゥイユの橋》やシスレーの《サン=マメスの橋》を見ると、印象派にとって水の反射に満ちた申し分のない題材であったことがよく分かります。これらは鉄骨でできた橋であり、産業革命の象徴でもあります。橋は当時の発展を明白に示す印象派の時代の特徴的なテーマでした。
ルノワールは風景画を頻繁には描きませんでしたが、数少ない彼の風景画作品は卓越したものばかりです。ボート漕ぎは、19世紀に端を発したレジャーのひとつで、印象派の絵画の格好の題材となりました。1875年にルノワールが描いたこの作品は、素晴らしく均衡のとれた作品です。光を添えながら濃い色彩で表現された川の中央部の深み、絵の具の交錯によって表現されたボート漕ぎの波、優しく柔らかなタッチで描かれた川の向こう岸など、作品中にはこれら3つの箇所にスポットが当てられ、それぞれ異なる水の反射が効果的に描かれています。
次ページでは、シスレーやシニャックを中心とした
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Update:2013.9.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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