2013年のパリ・フォトでは国外から3つの美術館が招待され、それぞれ新規の写真コレクションをもとに企画展を行いました。カナダ・トロントのオンタリオ美術館(Art Gallery of Ontario)がセレクトしたのは、1930年代の雑誌掲載のオリジナル写真と自国のアーティスト、アルノー・マッグス(Arnaud Maggs/1926-2012)のポートレート作品。ブラジル・リオデジャネイロのモレイラ・サレス協会(Instituto Moreira Salles)は、ブラジルの変わり行く風景を収めた写真の数々を紹介しました。ドイツ・エッセンのフォルクヴァンク美術館(Museum Folkwang)が行ったのは「時代の証人」と題された、ふたつの異なるフォトジャーナリズムを対峙させた展示です。世界各地の美術館が所蔵作品の選定にあたり、どのような方向性を持っているかを知ることができる、価値ある展示でした。
ヨーロッパで有数の現代アートと写真のコレクションを誇る、ファルケンバーグコレクション。ドイツのハンブルグにある旧工場の6,000uのスペースに、写真作品を含む2,000点以上の現代アートが収められています。
2013年にはそれらの豊富なコレクションからパリ・フォトのために展示作品が厳選されました。落書きのされたブリトニー・スピアーズ(Britney Jean Spears/1981-)のポートレート、1947年のニューポートの資産家夫婦殺人事件をモチーフにした作品など、アートからドキュメント色の強いものまで、幅広い内容でパリ・フォトの観客を惹きつけました。
写真作品と同時にパリ・フォトの主役を務めるのは、写真集や書籍です。
優秀な写真書籍を表彰するパリ・フォト・フォトブック・アワード(Paris Photo - PhotoBook Awards)では、審査員による最終選考に残った30作が会場中央に展示されました。また今年は≪PROTEST BOOK≫と題された「抗議」がテーマの写真書籍の回顧展が行われました。アメリカにおけるヴェトナム戦争の反対運動や60年代に日本で激化した学生運動、70年代から80年代のヨーロッパにおける環境問題、21世紀の「アラブの春」などと、戦後から現代までの抗議の歴史を写真書籍で振り返る内容です。今までに例を見ないコンセプトでまとめられた、ユニークでたいへん興味深い展覧会となりました。
Update:2014.1.7 文 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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