これらの展示室のコンセプトは、「できるだけ一般の人がコレクションに馴染みやすいように」というもので、そのための工夫が至るところにされています。展示室内のレイアウトや作品の配置ももちろんですが、コレクションに関する情報を与えるためのマルチメディア・ディスプレイが7カ所に置かれていて、操作を楽しみながらコレクションやその背景を発見し、理解を深める手助けをしてくれます。18世紀の雰囲気の中にしっくりと馴染むようなシンプルなデザインにも配慮をしました。
コレクションが由来する宮殿や邸宅について当時の資料を見ながらイメージを膨らませたり、また、18世紀の二大潮流、ロカイユ様式(摂政時代からルイ15世治世下)と新古典主義(ルイ16世治世下に始まり19世紀のナポレオンの時代まで続く)を分かりやすく図説とクイズで理解できるようなディスプレイもあります。
当時のテーブルセッティングを実際の銀食器を並べて再現してある展示空間には、「フランス式の食卓儀礼」を説明するディスプレイが置かれています。これは2010年にルーヴルと大日本印刷の共同プロジェクト、ルーヴル - DNPミュージアムラボの第7回展に際して開発され、日本でも展示されていたシステムが導入されたものです。ルーヴルでは他に古代エジプト美術部門、絵画部門に同様のシステムが設置されています。
この度は長年掛けて行われた工事が終わり、新しくなった展示室をこの場を借りてご紹介していただけるのを嬉しく思っています。2005年に閉鎖される前の展示空間は、1970年代の設備のために老朽化が目立ち、あまり見やすい展示とは言えませんでした。90年代のグラン・ルーヴルプロジェクトの一環として既にリニューアル計画が持ち上がっていましたが、リシュリュー翼が財務省からルーヴル美術館に帰属することになり、19世紀の新展示室がオープンし、その流れで自然に計画が着工される運びになりました。
ルーヴルの18世紀フランス工芸品コレクションは世界でも最も重要なもので、中でも壁の装飾に使われていたパネルのコレクションは唯一無二のものです。今回オープンした展示では、それらを活かして当時の内装を全体的に再現するものとなりました。再現に際しては当時の資料を読み込みながら、実際に残っている作品と再現用に制作したものがありますが、基本的に我々が創作したものはほとんどありません。細部に至るまでできるだけ忠実に再現してあります。
他の美術館やルーヴルの絵画、彫刻といった他の部門からも作品を提供してもらい、そのような協力のおかげで大変俯瞰的な展示方法が可能になりました。例えば有名なルイ14世の肖像画も、ここで当時の家具調度品と一緒に展示されることにより、本来の場所に落ち着いたような感覚さえ覚えます。
世界中から訪れる来館者が、できるだけ見やすく、理解しやすいようにと展示方法をさまざまな面で考慮しました。オープンからまだ日は短いですが、方々から私の耳に入って来る評判はかなり良いと言うことができるでしょう。
日本の皆さんはフランス美術に非常に造詣が深く、興味を持っていらっしゃると存じています。18世紀フランスの装飾美術は、実は日本とは切っても切れない深い関係があります。そのような部分も、この新しい展示室を訪れる日本の皆さんに感じていただきたい、という特別な思いがあります。
Update : 2014.8.1 文・写真 : 中澤理奈(Lina Nakazawa)
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