ゲランドの塩の歴史を学ぶ前に、「海水はなぜ塩分を含んでいるのか」、「どのように海から塩が生み出されるのか」といった塩に関する根本的な問いかけから塩田博物館の展示は始まります。展示の冒頭では、世界に分布する塩の産地を地図で紹介。さまざまな種類の岩塩や、世界各地で生産された食用の塩なども同時に展示し、塩が万国共通のテーマであることを印象づけています。
また2,000年以上も前から始まる人類と塩の関わりにも焦点を当て、古くから人々の日常生活に欠かすことのできなかった塩の役目を振り返っています。塩は調味料としてではなく、保存の手段としても太古から利用されてきました。魚や肉の塩漬け、バターといった塩を使った保存食の製造方法や道具を、「なぜ塩で保存するのか」、「どうして塩入りのバターなのか」といった問いかけのもとに紹介しています。塩にまつわるわたしたちのシンプルな疑問に答えながら、塩の普遍性とその重要性に興味を持ってもらうことが、このひとつ目のセクションの狙いです。
ふたつ目のセクションから、いよいよゲランドの塩についての展示が始まります。バ=ゲランドの塩田一帯の歴史は、農業だけでなく、商人による塩の取り引きから生じた経済史の一面も持ち合わせています。とりわけバ=シュル=メールに隣接するル・クロワジック(Le Croisic)の港は、中世より塩の運送船が発着する海洋貿易の拠点として栄えました。展示ではイギリス、オランダ、北欧の国々との間でなされてきた塩と物品の交易など、塩商人の取り引きの様子、塩を介した文化交流の軌跡をたどることができます。
またこのセクションではバ=ゲランドの塩田が1,000年以上の時をかけて拡大してきた過程や、ゲランドの塩の収穫方法、製塩方法を資料や映像を通して紹介しています。中でも1914年から1962年まで稼動していた塩の洗浄機を復元した展示は、リニューアル後の博物館の一番の見どころ。木造建築を思わせる大型の機械は、収穫後の塩を内部に通過させることで徐々に不純物を取り除くことができる仕組みです。この機械の動きや構造は、最新のマルチメディア装置による3D映像で分かりやすく学ぶことができます。
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Update : 2014.11.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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