Dossier special - 海外の特集

  • 1.館長からのメッセージが届きました!
  • 2.チェコ国立プラハ美術工芸博物館の魅力
  • 3.ほかでも見られるコレクションの数々

チェコ国立プラハ美術工芸博物館

ほかでも見られるチェコ国立プラハ美術工芸博物館コレクションの数々

 チェコ国立プラハ美術工芸博物館は本博物館以外でも、プラハ市内とチェコ国内で現在数箇所の展示を開催しています。それぞれの場所において、カテゴリー別に特化されたコレクションを鑑賞できるようになっているので、より深く美術品を鑑賞するにはもってこいの場所です。また郊外へ行きますと、チェコの美しい自然や素朴な生活風景、古城などの見学もできます。プラハからの小旅行でこれらの展示を鑑賞しに行ってみるのも、素晴らしい経験となるでしょう。以下でいくつかの展示をご紹介します。

「Vital Art Noveau 1900」──プラハ市民会館

▲市民会館はプラハのアール・ヌーヴォー建築の代表作
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 プラハで最も有名なアール・ヌーヴォー様式の建物といえば、市民会館が挙げられます。ここは中世には旧市街を守る壁が立ちはだかっていた場所であり、その後一時的にプラハ城に次ぐ王宮として機能し、最終的には20世紀初頭にプラハ市民のための市民会館となりました。

▲展示は毎日10:00〜19:00、2015年12月31日まで
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 多くのアール・ヌーヴォーの巨匠たちが集い完成したこの市民会館の内部において、チェコ国立プラハ美術工芸博物館主催の「Vital Art Noveau 1900」が2015年末まで開催中です。
 ここでは、1900年にパリ・ワールド・フェアにて展示されたアール・ヌーヴォー・コレクションの数々を堪能できます。絵画、図案、家具、コスチューム、装飾品、食器、またチェコのアール・ヌーヴォー様式の主要画家であるアルフォンス・ミュシャ(1860-1939)の作品も鑑賞できます。アール・ヌーヴォーの真髄に迫るに相応しい展示会場です。

キュビズム様式──黒い聖母マリアの家

▲黒い聖母マリアの家はキュビズム建築の代表作

 20世紀初頭のモダン期にヨーロッパの古典的な建築様式を覆したキュビズム様式の波がやってきます。中心になったのは1887年にプラハで設立されたThe Manes Association of Fine Artistsのメンバーであった、ヨゼフ・ゴチャール(1880-1945)やヨゼフ・ホホル(1880-1956)、パヴェル・ヤナーク(1881-1956)といった将来的に名を残す建築家たちでした。そのなかでもずば抜けた才能でチェコ国内に印象的な建築を多く残すヨゼフ・ゴチャールは、プラハ中心部にも「黒い聖母マリアの家」と呼ばれるキュビズム建築を設計しています。鋭角的な建物の表面には、建物内部からの主張がしっかりと表現されており、周りの建築群に溶け込まない一種異質な光を放ち続けています。建物の存在感とはまさにこのようなことを言うのでしょう。

▲キュビズム様式の小物入れ
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 2015年にはその「黒い聖母マリアの家」内部のキュビズム博物館が復活する予定です。やはりチェコ国立プラハ美術工芸博物館のコレクションを中心にリニューアル・オープンする予定です。現在博物館の所有するキュビズム様式の絵画、家具や食器などを中心に展示される予定で、他国では見られなかったチェコにおけるキュビズム様式の発達を垣間見ることができる展示会場となること間違いなしでしょう。

家具コレクションを見に郊外の古城へ──Zámek Kamenice nad Lipou

▲Zámek Kamenice nad Lipou(カメニッツェ・ナド・リポウ城)は南ボヘミアの自然豊かな場所にあります
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 プラハより南東へ約100kmほどのカメニッツェ・ナド・リポウ(Kamenice nad Lipou)という町にはチェコ国立プラハ美術工芸博物館のコレクションを見ることができる古城があります。もともと城が建設されたのは13世紀で、16世紀に改修工事を受け、19世紀にさらに改築されて現在の姿に至ります。戦禍を逃れたチェコにおいては、時代のなかで何度も改修・改築の工事が度重なり、従来の城の姿とは比べられないくらい変化をしている古城も多くあります。美しい色で壁が装飾されたこの古城内部は、1998年よりチェコ国立プラハ美術工芸博物館の展示会場として使用されています。

▲見事な数と品質の家具コレクションが時代ごとに並びます
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 鉄細工や鍵、玩具といったコレクションのほかに、ここでの見所は19〜20世紀製の家具コレクションです。職人が手作りで一つひとつの家具を作っていた産業革命前の時代から、工場での大量生産が開始された20世紀以降。家具は作り手を変え、材料を変え、見た目を変えていく最も顕著な分野でもありました。その変遷を時代を追って展示してあるコレクションは、私たちの生活そのものが時代とともに変わっていったことを教えてくれます。コレクションをご覧になりたい方は、事前にご予約の上お出かけください。

まだまだ見られる郊外のコレクション
──Zámek Klášterec nad Ohří とZámek Svêtlá nad Sázavou

▲雪のクラシュテレッツ・ナド・オフジ城(Zámek Klášterec nad Ohří)
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 ドイツとの国境近くのクラシュテレッツ・ナド・オフジ(Klášterec nad Ohří)の古城では陶磁器のコレクション、モラヴィア地方のスヴェトラ・ナド・サーザヴォウ(Svêtlá nad Sázavou)の古城ではグラスのコレクションも鑑賞できます。それぞれチェコ国立プラハ美術工芸博物館のコレクションの一部であり、美しい古城内部を見学しながら展示物を鑑賞できます。それぞれの地方の風土を感じながら、プラハから足を伸ばして鑑賞の旅をお楽しみください。

▲クラシュテレッツ・ナド・オフジ城(Zámek Klášterec nad Ohří)の陶磁器のコレクション
©チェコ国立プラハ美術工芸博物館

 このようなユニークな博物館はチェコにおいてもチェコ国立プラハ美術工芸博物館しかありません。魅力的な展示品の数々は、守られ続けた博物館の流儀と使命により、今後も多くの展示品を収集し続け、私たちの生活とともに生きる博物館であり続けることでしょう。

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Update : 2015.1.5
文・特記なき写真 : クレメントゆみ子(Klement Yumiko)
チェコ共和国プラハ在住。コーディネーター、現地ガイド、ウェブライター
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チェコ国立プラハ美術工芸博物館

所在地
17. listopadu 2, 110 00 Prague 1
Tel
+420 251-093-111
URL
http://www.upm.cz/
E-Mail
info@upm.cz
開館時間
火曜日:10:00-19:00
水曜日〜日曜日:10:00-18:00
2015年1月4日より約2年間閉館中
入場料
期間限定展示 80コルナ/一般展示 120コルナ
割引(学生・シニア・障害者・その他)期間限定展示 40コルナ/一般展示 70コルナ
家族(大人2人+15歳未満の子ども。15〜18歳は別途20コロナ)期間限定展示 150コルナ/一般展示 200コルナ
そのほかは以下を参照:
http://www.upm.cz/index.php?language=en&page=106
アクセス
地下鉄A線スタロメェツカー(Staroměstská)駅、またはトラム17番/18番、市バス207番下車。
※この情報は2015年1月更新時のものです。
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